研究課題/領域番号 |
19K01475
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
施 光恒 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (70372753)
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研究分担者 |
柴山 桂太 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (30335161)
佐藤 慶治 鹿児島女子短期大学, その他部局等, 講師 (10811565)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポスト・グローバル化 / 伝統論 / ナショナリズム論 / 大衆文化 / 翻訳論 / 新自由主義批判 / 人権と文化 / 人権教育 |
研究実績の概要 |
令和2年度(2020年度)の活動の中心は、コロナ禍で海外調査などが不可能だったため、研究会の開催だった。研究会は、2020年7月5日(日)(九州大学西新プラザ)、2020年10月17日(土)(九大西新プラザ)、2020年12月6日(日)(京都大学)、2021年2月17日(水)(zoomでのオンライン開催)、2021年3月17日(水)(鹿児島女子短期大学)の計5回行った。 このうち、2020年7月5日(日)は本科研のメンバーのみで研究の進捗状況を報告した。柴山は既存の伝統論の外観および新たな解釈について、佐藤は戦後期の大衆文化と「翻訳」との関わりについて、施はアンソニー・スミスらのナショナリズム論、およびそれと日本における人権理念の受容との関係性について、それぞれ報告した。10月17日は山口大学国際総合科学部助教の仁平千香子氏をお呼びし、移民文学(ディアスポラ文学)や日本語教育学の観点から「翻訳」の意味・意義について伺った。12月6日は、京都大学工学部助教の川端祐一郎氏をお招きし、ポスト・グローバル化時代の世界構想としての「移動しなくてもよい社会」の構想についてお聞きした。2021年2月17日はzoomを用いてメンバーのみで研究の進捗状況および今後の研究の進め方について話し合った。3月17日は、フランス文学者で翻訳家の堀茂樹氏(慶應義塾大学名誉教授)をお招きし、文学作品の翻訳の豊富なご経験から翻訳と異文化理解の可能性などについてお話を伺った。 各メンバーの本研究に関わる業績は、学会報告(招待講演)1回、短いものも含むが論文計10本(うち査読あり0)、共著本の部分執筆2(うち査読あり1)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度(2020年度)の共同での研究活動は当初の予定よりも進まなかったと言わざるを得ない。主な理由はコロナ禍のため、海外調査がほぼ取りやめになったことである。英国やイスラエルに渡航する予定だったが行くことができなかった。代替的方策としての国内における明治日本の産業遺産の調査に関しても3月に鹿児島に赴くことはできたが、さほど進んでいない。また、構想していた海外の比較教育学の研究者らを招いてのシンポジウムも延期せざるを得なかった。 メンバーの個人研究に関しては、コロナ禍で各々の大学での対処すべき事柄が増大したため若干低調ではあったが、それなりの進展が見られた。伝統論、翻訳と大衆文化論、リベラルな制度と基底となる土着の文化の位置づけについて等、各メンバーはそれぞれ研究を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果として、書籍(論文集)を完成させたい。現行の新自由主義に基づくグローバル化政策の破綻の実態やその思想的・哲学的原因、建設的なポスト・グローバル化の動きやその導きとなる理念と「翻訳」との関係性などに関する書籍である。 このうち、現行のグローバル化政策の実態やポスト・グローバル化の現実の動きについては、本来であれば、英国などにおいて現地調査やインタビューを行う予定だった。しかし、コロナ禍のため、海外調査を実施できるか否かは令和3年度も不透明である。そのため現地調査にはあまり期待せず、重要な文献に依拠しつつ、思想的分析の比重を増した形で進めていきたい。 令和2年度(2020年度)はシンポジウムを開催することができなかったが、令和3年度(2021年度)は、オンライン開催も視野に入れつつ、比較教育学や政治経済学の専門家を招いてのもの、および各メンバーの研究報告会的なものを開催したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が大きくなってしまった理由は、コロナ禍のため、予定していた海外調査や海外の研究者を招いてのシンポジウムができなくなってしまったためである。 令和3年度も海外調査を実施できるかどうかはいまだ不明確な状況である。海外からの研究者の招聘も不確定要素が大きい。したがって、国内調査や文献調査、オンラインでのシンポジウム開催などを充実させ、研究を進めていく予定を立てている。
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