研究課題/領域番号 |
19K01477
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
伊藤 正次 首都大学東京, 法学政治学研究科, 教授 (40347258)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 専門行政官 / 行政学 / 官僚人事システム / 専門性 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度となる2019年度においては、現代日本の専門行政官の制度に関する基礎的な知見を確認するとともに、専門行政官の活動実態を把握するための準備的な作業を行った。 具体的には、第一に、専門行政官の人事システムを規定する制度的な枠組みについて、①一般職給与法に定める俸給表に基づく分類、②採用試験区分による分類、という2つの軸から整理することを行った。その結果、①で専門行政職、税務職、公安職等の俸給表が適用される行政官のほか、税関職員や労働基準監督官等、行政職(一)に分類される専門行政官が存在し、②で専門職試験採用のほか、総合職試験・一般職試験で採用されながら専門的な業務に携わる職員(麻薬取締官等)が存在するなど、専門行政官の制度的多様性が明らかになった。 これを踏まえ第二に、2019年度は、海上保安官とCIQ(税関、出入国管理、検疫)担当職員に焦点を当てた事例研究に着手した。海上保安官は、公安職俸給表(二)の適用を受け、専門職試験で採用されるが、採用後も運用管制官、潜水士、機動防除隊等の専門職種に分化しており、高度な専門性が求められる官職であるという特徴をもつ。CIQ業務は、財務省の税関職員、法務省の入国警備官・入国審査官、厚生労働省の検疫官(医療職や食品衛生監視員等を含む)、農林水産省の家畜防疫官・植物防疫官等、多様な専門行政官で構成されており、相互の連携が求められていることが確認された。 こうした専門行政官の多様性は、当事者以外には必ずしも認識されておらず、2019年度においては、一般行政官の人事システムを主たる研究対象としてきた日本の行政学に対し、新たな学術的知見を提供するための基礎となる情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
専門行政官の人事システムを規定する制度的な枠組みについて、具体的な官職を分析することを通じて、専門行政官の人事システムの実態に接近することができた。海上保安官 に関しては、研究代表者が座長を務める人事院の研究会の協力を得て、2020年1月に第三管区海上保安本部でヒアリングを行うことができ、海上保安官の専門性の育成過程に関する具体的な知見を得ることができた。 他方、CIQ業務は、財務省、法務省、厚生労働省及び農林水産省にまたがる多様な専門行政官が関わり、その実態を解明することが困難な行政分野であることが改めて明らかになった。2019年度においては、各省の関係行政官に適用される俸給表と採用試験区分を確認し、税関、出入国管理、検疫に関する関連文献の収集・分析を行った。とくに、出入国管理については、2019年4月に発足した出入国在留管理庁の設置過程や、入国警備・入国審査に関する文献の収集・分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、2019年度に明らかにした制度的枠組みを踏まえ、専門行政官の人事システムに関する事例分析をさらに蓄積していくことを予定している。海上保安官については、関連する文献の収集・分析に基づき、可能であれば人事システムの運用実態に関するヒアリング等を行うことを予定している。 他方、CIQ業務については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、関係機関・担当職員へのアクセスが当面はほぼ不可能であることから、2020年度については関連文献の分析にとどめ、他の専門行政官(国税専門官、財務専門官等)に関する研究を進めることとしたい。2020年度は研究期間の中間年であるため、できるだけ幅広く専門行政官に関する情報を収集し、最終年度の取りまとめに向けた作業を行うこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
文具類の購入に際し、端数が発生した。次年度の物品費として支出することを予定している。
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