研究課題/領域番号 |
19K01483
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
三船 毅 中央大学, 経済学部, 教授 (00308800)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 政党間競争 |
研究実績の概要 |
本研究は政党間競争のフォーマルセオリーのモデルを援用して,現代日本の政治過程を再構築し,日本の政党間競争の背後に潜む行動の論理を明らかにすることである.特に政党の離合集散の常態化と,国政選挙の投票率の低下である. 令和元年度は,理論的研究を引き続き中心に行ってきた.本研究の中心は(1)選挙,(2)政策形成,(3)分裂・新党の3つの事象を一連の事象として連関性をもたせて,議会政治過程の動態を克明に記述するモデルを構築することである.しかし政党間競争の典型的なモデルは,ダウンズモデルを踏襲してきたが,それは現実から大きく乖離した状況でのモデル化でしかない.本研究はダウンズモデルでなく,ウィットマンモデルを踏襲し,現実の政治過程における政党の離合集散とその状況に応答する有権者の態度をより反映できるモデルの構築を目指している.だが,政党の分裂と新党の結成を記述する動的モデルの構築に困難な場面があり,今一度再考して,代数的表現形式と動的モデルの観点から解析学的なモデルも含めて修正することを考えている. 理論的研究の過程で政治過程の幾つかの場面に応用できる可能性が発見された.本研究は交換ネットワーク理論を基礎にゲーム理論も応用することから,派生的研究も行い研究の幅をひろげて実証分析に関しては,政党間競争における選挙における集票構造を,グラフィカルモデリングにより因果構造をモデル化し,棄権の増加と投票率が低水準になる構造を分析した.またサーベイデータを用いて有権者の政策選好から構成される政策空間の一部が超保守的な有権者により歪められ,それが政党間競争に及ぼす効果を分析した.この成果の業績としては,(1)2000年代以降の政策空間の変化が有権者の行動に如何なる影響を及ぼしたのかを分析した「有権者の政策空間の変容と参加」『地球社会の複合的諸問題への応答の試み』(中央大学出版部)がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在まで,重要な先行研究であるJ.コールマンの交換ネットワーク理論とJ.ローマ-の政党間競争モデルを精査した.彼らのモデルを援用し,日本の55年体制以降における様々な政党間競争と有権者の行動を再現するフォーマルモデルを構築している.また,これらのフォーマルモデルはアクターの合理的な行動を描くだけでなく,彼らの一見非合理的な行動の背後に在る論理をも推測できるように工夫している.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年の2月以降の新型コロナウィルスにより,4月からは大学研究室に入構できない状況が続いている.研究資料とコンピューターは研究室にあるので,現在まで研究は中断したままである.今後の予定としては,約6ヶ月から12ヶ月の遅れを見込むことになる.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究室への入構が不可能になり,予定していた研究機材,文献の購入ができなくなったため.
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