研究実績の概要 |
本研究には以下の三つの軸から展開する。(1)戦後日本の首相演説は、どのような概念メタファー(Conceptual Metaphor) (e.g., Lakoff 1993; Lakoff & Johnson, 1980, 1999, 2003)による認知フレーム(cognitive framing)を形成して有権者に支持を訴えてきたのか。(2)概念メタファーにより形成された認知 フレームはどのような通時的変化を経たのか。(3)どのような社会的要因の影響を受けて通時的変化がもたらされたのか。 2020年は、各首相演説おいて用いられたメタファーを、6つの概念メタファー領域群((1)旅や経験、動きに関わる領域群(2)擬人化に関わる領域群(3)建 物や構造に関わる領域群(4)自然に関わる領域群(5)戦いや競技に関わる領域群(6)ビジネスに関わる領域群)に分類し、それぞれの領域群の出現頻度と比率を 算出した。また、これらのメタファー領域群のデータ・ベースを作成した。これにより、本研究の目的である、(1)各首相の概念メタファーの使用パターンと (2)その通時的変化を可視化する試みにおいて一定の成果を得た。 2021年度は、(3)これらのメタファー使用の変化をもたらした社会的要因(経済指標、無党派層の割合、メディアの普及率など)との関係を検証しようと試みた。しかし、メタファーの出現頻度は算出方法によって大きく変わる。またその頻度も領域群によってはそれほど高くないため、分析手法は精査する必要があることが明らかになった。同時に、(1)(2)に関しては、英語論文の執筆はある程度進んでいるので、なるべく早い段階で投稿したい。
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