研究課題/領域番号 |
19K01490
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
野田 遊 同志社大学, 政策学部, 教授 (20552839)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ガバナンス / シェアードサービス / 行政編成 |
研究実績の概要 |
2020年度は、日米豪の自治体における行政体制再編メカニズムの明確化に向け、三つのアプローチで進めた。第一は、自治体の行政体制再編について先行研究の分析・整理である。新型コロナウイルスパンデミックで現地調査ができなかったため、海外ジャーナルの探索と、海外の学会の分科会メーリングリストから得られる研究情報に基づくものとなったが、成果は大きく二点あり、一つはアメリカやオーストラリアの自治体構造やシェアードサービスの実情を把握した。たとえばオーストラリアの制度については特にメルボルンにおけるボトムアップ型の都市統治のモデルに関する研究を整理した。もう一つは、制度的集合行為理論の分析枠組み(Institutional Collective Action Framework)を念頭においた自治体間関係の把握である。自治体数、アクターや自治体のおかれた経済・財政環境の異質性、政策問題の複雑さ、連携の権威性あるいは国による誘導性といった条件が取引コストを変動させ、当該コストが高いときに、自治体間連携が促進されず、逆に低くなるときに促進されるメカニズムを把握し日本の広域連携への適用を検討した。 第二のアプローチでは、市町村・県へのインタビューを通じて行った日本の広域連携と行政編成に関するアンケート調査項目の検討である。行政編成と民主的・効率的運営、また、取引コスト低減要因、国誘導施策と自発的連携施策の相違等の論点を検討した。 第三のアプローチは、日本のガバナンス改革に関する研究をアメリカの州立フロリダアトランティック大学アリ・ファラツマンド(Ali Farazmand)教授と情報交換を行いながら進めた。ファラツマンド教授はガバナンス研究の世界的大家として著名であり、制度論と経路依存理論の適用可能性の助言を受け、ガバナンス改革の側面から研究を進め、ガバナンススタイルと行政の改革の関係に迫った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響があり、海外の現地調査として予定していたアメリカならびにオーストラリアへは行くことができなかった。それぞれの国の自治体や関連組織間の連携に関する実情の聞き取りができないことが想定されたため、これら両国における自治体の研究は文献に頼らざるを得なかった。別途、アメリカ行政学会等の学会の分科会によるメーリングサービスから受け取る研究情報から最先端の研究を入手することで研究動向をキャッチアップした。また、国内でのアンケート調査の実施についても調査項目は検討したものの、COVID-19パンデミックが収まらないなかで、自治体行政の内部では、普段以上に業務多寡になり、別途アンケートへの回答の負担を依頼することは、回収率の大幅な低下を招くと判断し、アンケートの実施を断念した。 ただし、先行研究の整理の中から、制度的集合行為理論のフレームワークの本研究への適用の有用性を明らかにすることができため、国内の自治体に向けたアンケート調査項目については本研究の目的である行政体制再編のための要因等に接近するためのより効果的な検討が可能となった。こうしたことより2021年度はこの調査項目をもとにアンケートを実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
日本の全国の自治体に向けたアンケートは、2020年度に検討した項目をブラッシュアップし、COVID-19パンデミックの状況から回収率の影響を判断しつつ、計画的に実施する予定である。どのような要因により自治体間の広域連携が促進され、行政編成を変革するか。また、民主的、効率的な自治体運営の要因がいかなるものかについて具体的に特定するとともに、地域別にみたハイブリッドガバメント像に迫ることにする。あわせて、インターネットアンケートについても予算の範囲で実施を検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、全国の市町村に対してアンケート調査を行う予定であったが、COVID-19パンデミックが拡大し、そうした中での調査実施により回収率低下が懸念されたことから、調査票の検討にとどめることにした。このため、アンケート調査票の印刷・実施のための郵券代、データ入力・集計代がかからなかった。また、海外調査も予定していたが、COVID-19パンデミックにより実施できなかった。一方、行政編成に関わる調査データの入手により一定費用を捻出したものの、アンケート実施と海外調査の予算合計額より小さかったため次年度使用額が生じた。2021年度は市町村アンケートを確実に実施するとともに、インターネットアンケートについても予算の範囲内で実施を検討している。
|