研究課題/領域番号 |
19K01491
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
河本 和子 一橋大学, 経済研究所, 研究員 (50376399)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ソ連史 / ソ連民法 / 社会主義経済 |
研究実績の概要 |
2019年6月30日に、第10回 East Asian Conference on Slavic Eurasian Studiesにて“Socialism and the Right of Inheritance: A Discussion on the Reform of the Soviet Civil Law in the Late 1930s”と題する報告を行い、同名の論文をワーキングペーパーとして一橋大学経済研究所ロシア研究センターのホームページならびに一橋大学機関リポジトリに公開した。本論文は、社会主義が成立したと宣言した後、ソヴェト政権が、財産権および相続権を社会主義の枠内でどのように正当化したかを明らかにし、さらにそのロジックと帰結を明らかにしたものである。 また、「戦間期ソ連におけるコンセッションと対外関係――外国人の権利を通して」と題する論考を『国際政治』に投稿し、査読に通った。本論文では、ソヴェト政権が経済復興のために外国人投資家を呼び入れるべく、特権を彼らに与える一方で、彼らの活動に制約を加えようとしたこと、その後の諸外国との関係悪化と急激な社会主義化とを契機として外国人投資家が排除されていったことを、外国人の相続権および財産権に注目しながら論じた。 2019年9月1日から15日にかけてロシア国立図書館で資料調査を行い、経済史および法制度史に関する先行研究を主として収集した。同時に、ロシア国立社会政治史公文書館ホームページより、コンセッションや民法制定に関する資料をダウンロードした(閲覧およびダウンロードはロシア国内のみから可能)。そのほか、法制度に関する情報、また法学的な議論をロシア国立図書館、一橋大学経済研究所資料室、さらにНаука права(法の科学)等のデータベースで収集した。資料の多くは『国際政治』投稿論文に用いた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に行う予定だった作業は、第1にスターリン憲法での個人財産権・相続権の法律による保障の意義づけを明確にするべく、1918年の相続制度廃止による変化と、それへの政権の対応について調査すること、第2にスターリン憲法制定に至る過程で個人財産権・相続権に関してどのような議論がなされていたかについて調査することであった。関連する文献および資料を、ロシア国立図書館および一橋大学経済研究所資料室、Наука права(法の科学)等のデータベースで渉猟した。また、ロシア国立社会政治史公文書館の資料も閲覧・収集した。 加えて、概要で記した通り、第2の問題と関連する研究報告を行い、報告原稿をワーキングペーパーとして公表した(“Socialism and the Right of Inheritance: A Discussion on the Reform of the Soviet Civil Law in the Late 1930s”)。また、第1の問題の一端を明らかにする論文の執筆を行った(「戦間期ソ連におけるコンセッションと対外関係――外国人の権利を通して」)。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度においては、収集した文献および資料の分析を進める。すなわちスターリン憲法制定にいたる過程での個人財産権・相続権に関する議論の検討を進め、また、相続権廃止の影響について分析して、それぞれ論文の構想を練り、執筆に着手する。 加えて、スターリン憲法制定後に財産権をめぐる実務にいかなる変化が起きたか、また、スターリン後に個人が与えられた権利を用いてどのような経済活動に従事していたか、の2つの課題に関し、資料の調査を開始する。国内の図書館およびモスクワの図書館、公文書館で資料収集を試みたい。しかし、モスクワでの資料収集は、現在の新型コロナウイルス感染症蔓延という事態にかんがみ、困難であろうと予測されるため、国内の図書館および内外のデータベースを集中して使いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
出張費が想定したよりも安くなったためであり、書籍発注の必要が予想外に少なかったためである。2020年度は先行研究の発掘により力を入れ、図書の発注に努める。
|