研究課題/領域番号 |
19K01491
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
河本 和子 一橋大学, 経済研究所, 研究員 (50376399)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソ連史 / 社会主義経済 / 科学技術革命 |
研究実績の概要 |
2020年9月に発行された『国際政治』201号に「戦間期ソ連におけるコンセッションと対外関係――外国人の権利を通して」が掲載された。本論文では、ソヴェト政権が経済復興のために外国人投資家を呼び入れるべく、特権を彼らに与える一方で、彼らの活動に制約を加えようとしたこと、その後の諸外国との関係悪化と急激な社会主義化とを契機として外国人投資家が排除されていったことを、外国人の相続権および財産権に注目しながら論じた。12月には、同論文にデータを追加し、12月19日~20日に富山市にて開催されたコンファレンス「新興市場の比較経済分析:中国・ロシア・東欧」(一橋大学経済研究所共同利用共同研究拠点/ロシア研究センター・京都大学経済研究所共同利用共同研究拠点合同コンファレンス[開催地:富山市])にて報告を行った。 また「冷戦期科学技術政策の変容に関する国際比較研究―スプートニク事件を転換点として―(科学研究費補助金基盤研究(B)研究代表者:松村史紀)」の研究会において、「スプートニクのソ連:軍需産業からオカルトまで」と題する報告を行った。この報告で、第二次世界大戦後のソ連における科学技術政策と、経済運営効率化策およびそのために取り入れられた国家権力の分権化との関係を分析し、さらに連動する権力闘争、文化政策を取り扱った。科学技術政策と経済効率化・分権化政策の部分は、本科研の成果でもある。 2020年度に予定していたロシアへの出張は感染症問題ゆえにかなわなかったため、国内で可能な文献調査を主に行った。一橋大学附属図書館および同大経済研究所資料室で関連する研究を集め、近年刊行された書籍を購入したほか、ロシア国立図書館ウェブサイトおよびロシア国立社会政治史公文書館のウェブサイトから資料を入手した。資料の多くは、『国際政治』掲載論文とそれを手直しした報告、また研究報告「スプートニクのソ連」で用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に行う予定だった研究のうち、憲法制定後に実務がどのように変化したか、憲法を受けていかなる議論が発生し、どういった制度変更が目指されたかについては、一部をすでに2019年度中に実施し、一橋大学経済研究所ロシア研究センターのワーキングペーパーとして公表している。2020年度中にモスクワの公文書館で資料を追加収集し、ペーパーをブラッシュアップする予定であったが、感染症問題ゆえに出張がかなわず、果たせていない。 2020年度のもう一つの課題であるスターリン後の個人の経済活動と相続については、それを明らかにするにあたって必要な背景事情の整理を、研究報告「スプートニクのソ連:軍需産業からオカルトまで」で行った。すなわち、スターリン後の経済運営効率化の要請と科学技術政策の変容、経済運営も含めた行政運営の分権化を報告において論じた。スプートニク関連の科研参加は予定外であったが、本科研の課題と組み合わせることにより問題の文脈を押さえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においてもモスクワ等ロシアでの資料収集は不可能となる公算が高いことを考慮に入れ、すでに入手した先行研究・資料と日本において入手可能な資料とを用いて研究を進める。具体的には、スターリン憲法制定後の財産権・相続権について、すでに公表したワーキングペーパーのブラッシュアップを図る。また、フルシチョフ期における個人の経済活動について文献での調査を行い、論文の構想を練り、執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として感染症問題により出張が不可能となり、出張費が不要になったためである。2020年度に引き続き、2021年度も必要な書籍・論文の購入・複写に力を入れる。
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