研究課題/領域番号 |
19K01491
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
河本 和子 一橋大学, 経済研究所, 研究員 (50376399)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ソ連史 / 社会主義経済 / 結婚と離婚 / 相続制度 |
研究実績の概要 |
2021年10月16日・17日に開かれたロシア・東欧学会2021年度研究大会において、分科会4 パネル:ソ連・ロシアにおける戦時/平時の日常生活とジェンダーにおいて、「第二次世界大戦中のソ連における結婚と離婚」と題する報告を行った。本報告は、第二次世界大戦中のソ連において、戦争がいかに日常生活を変容させ、現実には剥き出しの力関係に弱者を晒し、法的には結婚、離婚、親子確定における自由が縮減されていくありさまを描いた。同報告に加筆修正を加えた同名の論攷が、2022年3月に発行された『立教法学』106号に掲載された。 また、2022年3月に発行されたJapanese Slavic and East European Studiesの42巻に"Socialism and the Right of Inheritance: A Discussion on the Reform of the Soviet Civil Law in the Late 1930s"が掲載された。本論文では、社会主義にそぐわないものとして一旦は廃止されていた相続制度が、どのように社会主義理念から正当化されたか、社会主義にふさわしい相続制度はどのようなものと考えられたかについて、新憲法制定後に行われた新民法制定に関する法学者たちの議論から論じた。 2021年度に予定していたロシアへの出張は感染症問題ゆえにかなわなかったため、国内で可能な文献調査を主に行った。一橋大学附属図書館および同大経済研究所資料室で関連する研究を集め、近年刊行された書籍を購入したほか、ロシア国立図書館ウェブサイトおよびロシア国立社会政治史公文書館のウェブサイトから資料を入手した。収集した資料の多くは、上記の学会報告・論文に使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に行う予定だった研究のまとめとして、憲法制定後に実務がどのように変化したか、憲法を受けていかなる議論が発生し、どういった制度変更が目指されたかについて、上記の通りJapanese Slavic and East European Studiesの42巻に"Socialism and the Right of Inheritance: A Discussion on the Reform of the Soviet Civil Law in the Late 1930s"を発表した。これは2019年度にワーキングペーパーとして所属先研究所で発表した同名の論攷をブラッシュアップしたものである。ロシアでの資料調査がかなわず、日本で入手可能な資料で研究のまとめをはかった。このほか、研究全体の前提となる自由のあり方について、『立教法学』106号に掲載した「第二次世界大戦中のソ連における結婚と離婚」で考察を加えた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度においても、現在継続中の戦争ゆえに、モスクワ等ロシアでの資料収集は不可能となる公算が高いことを考慮に入れ、すでに入手した先行研究・資料と日本において入手可能な資料とを用いて研究を進める。具体的には、フルシチョフ期の消費活動につき、問題視された行動は何かを裁判例などから探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度および2021年度に予定していたロシアでの資料調査が、新型コロナ感染症ゆえに不可能であり、計上していた旅費を使うことがなかったため、次年度使用額が発生した。差額は先行研究および基礎的な文献の購入に充てる予定である。
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