研究課題/領域番号 |
19K01493
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小関 素明 立命館大学, 文学部, 教授 (40211825)
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研究分担者 |
吉田 武弘 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (30772149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 終戦工作と木戸幸一 / 敗戦と「錦旗革命」 / 近衛文麿「改正綱領」 / 内閣の衆議院解散権 / 国家公務員制度 / 日本近代主権 / 二院制度 / 佐々木惣一 |
研究実績の概要 |
計画は順調にすすんでいる。研究代表者が著書『日本近代主権と「戦争革命」』<単著>日本評論社。2020年12月刊行、1~488頁)を公刊したことが具体的な研究成果としてあげられる(これは業績欄には昨年度に出版予定という形で掲載したので、記載していない)。これは全二部構成で序章、終章を含め全10章より構成され、第一部「戦争の利用と「錦旗革命」、第二部「「錦旗革命」の投影と戦後日本」ともども申請した研究課題と直結する内容となっている。 第二部に関しては、本来なら敗戦後の新憲法制定に深く関わった法制局第2部長佐藤達夫関係文書(国立国会図書館憲政資料室蔵)を入念に分析した成果を盛り込みたかったが、2020年度もコロナ禍に見舞われ、東京への資料調査が大きく制約されたため、所属する立命館大学に所蔵している入江俊郎関係文書(入江は法制局長官で佐藤達夫の上司)で代用しなければならず、その点不徹底さが残されたことが若干悔やまれる。 が、こうした制約を孕みつつも、本研究計画に申請したテーマに即応した研究成果を著書というまとまった形で公刊できたことは、喜びに堪えない。 上記書第二部の中心的テーマとして分析した衆議院解散権の範囲の解釈をめぐる内閣と議会との確執と攻防、内閣の権力資源としての行政官僚の身分保障の内容と範囲、強度の確定について、これからも厳密に分析を掘り下げて行きたい。 上記単著の公刊に向けた準備と並行して、敗戦後の国民意識を明らかにするための資料収集、読み込みを部分的にすすめた。収集の対象とした資料は、当該時期の論壇誌や文芸雑誌に掲載された論説、文学作品(散文、詩、短歌)、対談、知識人の日記などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請した研究課題に即応した研究成果を最終年度をまたずに著書として刊行できたことは予想以上の進捗状況と言える。ただし、それはコロナ禍の影響で当初予定していた東京への史料調査と収集作業が阻まれ、立命館大学所蔵の資料で充当したことにより結果的に作業時間が短縮できたことによる面が多く、手放しでは喜べない側面もある。 できれば著書に盛り込めなかった資料を改めて収集、分析し、個別論文の形で成果として公刊したいとは考えているが、2021年度もコロナ禍が継続し、国立国会図書館の利用が制約されることも想定して置く必要がある。 その場合、申請した研究計画の範囲内で研究対象を敗戦後の民主化に直面した国民意識の検証にテーマを変更する可能性を検討しておかなければならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
条件の許すかぎり、申請した研究テーマと対象を研究していきたいと考えているが、上記のようにコロナ禍により、申請した研究テーマの範囲内で研究対象の修正をしなければならない場合は、戦後民主主義の深度を検証する際に逸することができない課題である国民意識の分析に作業をシフトすることも視野に入れている。その場合、知識人をも含めた国民の「大東亜戦争」観、「敗戦」の受け止め方、対米意識、天皇観、新憲法への意識の相互関連の分析が中心となる。このテーマの場合、当該時期のメディアに発表された論説だけではなく、日記、文学作品(散文、詩)なども資料になる。 読み込まなければならない資料は依然厖大ではあるが、申請者は本研究計画のテーマと並行して、これら資料を収集し読み込む作業をすでに部分的に進めているので、このテーマへの変更は必ずしも無謀なことではない。 さらに、必要とする資料の多くは活字メディアに公表されているので、東京や他府県への本格的な資料調査を必ずしも必要としない。 それにくわえて、このテーマに変更した場合、「大東亜戦争」が1950年代の国民文学論にどのような影響を残したのかという点に視野が及ぶことになり、戦後民主主義と戦後国民文化との相関性という未踏のテーマに踏み込む足がかりを得る上でも有効であると思われる。 この作業によって得られた成果を、まず手はじめに学会誌に発表し、一定の感触を得たのちに一書にまとめることを目標にしたい。
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