研究課題/領域番号 |
19K01494
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
岡本 哲和 関西大学, 政策創造学部, 教授 (00268327)
|
研究分担者 |
石橋 章市朗 関西大学, 法学部, 教授 (40368189)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | インターネット選挙 / 通常化・平準化 / ネット政治 / 政治情報 / 投票行動 / メディア政治 / 日本政治 / 情報政治学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、インターネットと政治・選挙をめぐる通常化・平準化の状況が、どのような要因によってもたらされたのかを明らかにすることである。そのために、国・地域全体だけではなく選挙区レベルに焦点を合わせて、通常化・平準化の検証を行う。この目的に向けて、2019年度においては2019年7月21日に実施された参議院通常選挙を対象として、有権者を対象としたアンケート調査を実施した。これは、候補者による情報発信から有権者が受ける影響について政党や候補者で違いがあるかどうか(たとえば、大政党から発信された)を検証するためのものである。 具体的には、ネット調査会社に委託して、2019年参院選の投票日翌日にあたる同年7月22日から24日までの期間において、質問フォームが用意されたウェブサイト上で回答する形で実施された。サンプル数については、総務省統計局によって2019年4月12日に公表された2018年10月1日時点の人口推計に基づいて、世代及び性別別に人口比に応じた割付けを行っている。結果として、1038の有効なサンプルが得られた。なお、研究代表者らがこれまで実施してきた有権者のネット情報接触についての調査では、政党もしくは候補者によるウェブサイト、ツイッター、Facebookのいずれかに接触経験を有する人を選び出し、そこから無作為抽出でサンプルを抽出してきたが、この間に一般的なインターネット利用がかなり進んだこと、またサンプルのバイアスをより少なくする必要があることから今回はこのような手続を用いた。サンプル抽出方法の違いがどのような結果をもたらすかについては、2020年度以降に分析を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、2019年参院選時に、インターネットでの選挙情報との接触が及ぼす影響についての有権者調査及び参院選候補者によるインターネット利用実態についての調査を問題なく実施することができた。2020年度に調査結果の分析に取り組めるようになったことも、当初の計画通りである。 「研究実績の概要」でも述べたように、2019年参院選の有権者調査では、研究代表者らが科研費等によってこれまで国政選挙時に実施してきた有権者のネット情報接触についての調査で行ってきた方法とは別の方法でサンプルの抽出を行った。その理由は、学会関係ジャーナル等に掲載された研究代表者による著書についての書評で指摘された研究上の問題点に対応するためである。サンプル抽出方法の変更のため、これまでに行ってきた調査結果との比較可能性はやや低くなる可能性もあるが、インターネットで選挙情報と接触した有権者と接触しなかった有権者との比較を行った上で、選挙情報との接触が及ぼす影響についての検証を行うことができるようになった。これによって、他の研究者によって実施されてきた選挙時における有権者調査の結果との比較可能性は高まった。 参院選候補者によるインターネット利用実態についての調査についても、当初の計画通り実施することができた。具体的には、2019年7月4日から7月20日までの公示期間に、各候補者がウェブサイト、ツイッター、フェイスブックを利用しているかどうかについて確認を行った。結果として、370人の候補者のうち、ウェブサイトを利用している候補者は263人(71.1%)、ツイッターは277人(74.9%)、フェイスブックについては260人(70.3%)であったことが明らかになった。各候補者についての諸データ(所属政党、当選回数、年齢、性別など)および選挙区特性等の関連データについても入力はすでに完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度においても前年度までと同様に、2019年参院選における有権者調査データと候補者によるインターネット利用状況調査結果データを用いた分析によって、さらに補足的に我々が科研費等によってこれまでの選挙で行ってきた調査データの分析によって、インターネット選挙に係る「通常化」と「平準化」を生じさせる要因についての探求を続ける。基本的には、研究の推進方策については変更はない。 これに関して、2020年度中に衆議院が解散されて総選挙が実施される場合には、あらためて調査を実施する必要があるため、若干の研究計画(特にスケジュール)の変更も生じうる。新型コロナウイルスの影響により、現時点(2020年4月)では、年度内に衆議院の解散・総選挙が実施される可能性は高くはなさそうであるが、まったくないとも言えない。もし衆議院が解散されたとしても、調査項目は研究代表者・研究分担者が2017年衆院選時に科研費で実施したものとほぼ同様のものとなるため、調査実施の面では十分に対応できる。予算面でも、問題はない。2020年度中には総選挙は実施されないと高い確率で予想が可能である場合には、当初の計画通り地方議会選挙での調査を実施する。どの地方選挙で実施するかは、選挙のタイミング及び自治体規模(ある程度人口規模の大きな市を予定)等を考慮して、できる限り早い段階で決定する。 2020年10月に京都大学で開催が予定されている日本政治学会研究大会では、「亥年選挙」に関するセッションにおいて2019年参院選における有権者調査データを用いた分析の一部を報告し、討論者と学会会員との議論を通じて研究の改善を行っていく。ただし現時点(2020年4月)では、新型コロナウイルスの影響で学会の開催自体を含めてどのような形式で研究成果を発表できるかについては不確定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度については、同年度中に衆議院解散・総選挙が実施されるかどうかについても注視しながら、参院選についての調査・分析を含む2017年度の研究支出計画を実行した。衆議院が解散された場合には、有権者調査および候補者調査を行う必要があるため、前倒し請求も視野に入れた上で、年度内の衆議院選挙にも対応できるように研究支出を少し後に回しながら進めていく必要があった。2019年度後半には、今年度中の衆議院の解散はないと判断したが、その時点で支出項目の中で金額的にも大きな位置を占める参院選についての調査と支出手続きはすでに完了していたため、わずかではあるが残金を次年度使用額として、2020年度の衆議院解散・総選挙の可能性にも備えた方が得策であると判断した。なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年度の衆議院解散・総選挙の可能性はかなり低いとも考えられるが、上記の判断を行った時点でパンデミックの影響については想定していなかった。 次年度使用額については、基本的には本来予定されていた地方選挙における有権者および候補者によるインターネット利用についての調査実施のために支出する。具体的には、令和2年度の「人件費・謝金」分に、今回の次年度使用額を合わせて使用する。もし衆議院が解散された場合には、今回の次年度使用額を令和2年度の「人件費・謝金」分と併せて、調査費として使用する予定である。
|