インターネットと選挙をめぐる通常化・平準化をもたらす要因を明らかにすることが研究の目的である。通常化とは大政党やベテラン議員が、平準化とは中小政党や新人候補が、それぞれインターネットを積極的に利用していることを指す。そのために、2019年参院選および2021年衆院選時に、(1)候補者によるインターネット利用の状況、(2)有権者によるインターネットを介した選挙情報との接触およびその影響、についての調査をそれぞれ実施した。 2019年参院選での候補者によるインターネットの利用率は、ウェブサイトで71.9パーセント、ツイッターで75.7パーセント、フェイスブックで70.5パーセントであった。さらに所属政党や候補者の地位で見た場合、通常化の進行を示す傾向が一定程度見出された。すなわち、所属政党については、自民党候補者および立憲民主党候補者のインターネット利用率は、他の政党や無所属・諸派候補者と比較して高い傾向にあった。候補者の地位について見ても、前・現職候補者のインターネット利用率は新人候補者のそれに比べて高かった。 研究期間の最終年度にあたる2021年度に実施した2021年衆院選調査では、ウェブサイトで78.3パーセント、ツイッターで75.5パーセント、フェイスブックで73.4パーセントの候補者がそれぞれを利用していたことが示された。2019年参院選と同様に、所属政党および候補者の地位別に見た場合には、通常化の進行を支持する結果が示されている。これらの分析は、候補者個人を単位として行われたものである。これに対し、衆議院の小選挙区を単位とする分析では選挙の接戦度と選挙区特性が通常化・平準化の進行と関係がある可能性が示唆されている。これについては、有権者調査データの分析と合わせて、さらに深く今後も分析を進める予定である。
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