研究課題/領域番号 |
19K01496
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西崎 文子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60237691)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウッドロー・ウィルソン / 人種問題 / リベラル / 国際秩序 |
研究実績の概要 |
一年目にあたる本年度は、近年のウィルソン政権期に関する国内外の研究の成果や、Arthur S. Link, et. al.によるPapers of Woodrow Wilson、Foreign Relations of the United States、米国議会資料などを読み込む作業を開始した。なかでも、大統領就任以前のウィルソンの人種問題をめぐる認識や、ウィルソン政権とNAACP(全国黒人地位向上協会)との関係など、今後、ウィルソン外交と人種問題との相関を追究していく際の分析枠組みとなりうる要素を洗い出すべく、国内政治関連を含めた幅広い資料・論文を検討した。同時に、ウィルソンの人種認識がラテン・アメリカやアジアに作用した可能性を探るというプロジェクトのテーマに沿って、ウィルソンの西半球政策および東アジア政策を中心に資料や論文を収集・検討した。 研究成果としては、日本国際政治学会刊行の『国際政治』198号の特集「ウィルソン主義の一〇〇年」の編集責任者として8編の論文の編集作業にあたったほか、序章「ウィルソン主義の一〇〇年」を執筆した。この特集は、ウィルソン外交と人種問題に焦点を絞ったものではないが、ウィルソン外交が欧米、ラテン・アメリカやアジア、そして20世紀の国際政治全般に及ぼした影響を分析した論文を集めたものである。序章では、ウィルソン外交の持つ長期的な意義が、その同時代性と原則性にあると論じて、本プロジェクトの下地となるウィルソン外交・ウィルソン主義認識を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたワシントンDCでの資料調査は、2020年初頭の新型コロナ感染拡大の影響もあって実施できなかったが、ウィルソン研究関係の新しい資料の入手、および資料や論文の読み込みは概ね予定通りに進捗した。またウィルソンの「遺産」に関する論文も執筆・公刊したことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は引き続きPapers of Woodrow WilsonやForeign Relations of the United Statesなどの公刊資料を読み込むと同時に、当初計画どおり、ワシントンDCの国立公文書館(国務省、司法省の文書)および議会図書館(Robert Lansing, William Jennings Bryan, Woodrow Wilson)、およびプリンストン大学図書館(Woodrow Wilson Papers)を中心に資料調査を行い、随時米国の研究者との意見交換の場を持つ予定である。また、「ウィルソン大統領と人種の問題」と題した序説的な論文もしくはワーキング・ペーパーを刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年春に米国で調査研究をする予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大により実施できなかったため、次年度使用額が生じた。2020年度には夏と春の二回にわたり米国ワシントンDCとプリンストン大学で資料調査し、米国の研究者との意見交換を行う予定である。
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