研究課題
本年度もコロナ禍の影響で米英の現地文書館での資料調査が実施できなかったため、(1)日米英の公刊資料の読解と、(2)関連する二次文献(先行研究)の比較検討によるワシントン体制理解の整理を主に行った。あわせて、分担者として参加する他の科研費による研究成果ともあわせる形で、(3)戦間期と現代の国際秩序論の比較検討も実施した。上述の通り、論文化には米英の現地文書館での資料調査が必要だが、特に(2)を中心とした成果については、一般向けの書籍や雑誌への寄稿として途中経過を公表した。まずワシントン会議の意義と限界を、近年の研究状況を踏まえて整理した(中谷「ワシントン会議──海軍軍縮条約と日英同盟廃棄」筒井清忠『大正史講義』ちくま新書)。また、とくに(3)の国際秩序論との関係で、開放型の国際秩序の特徴を、ワシントン会議と日英同盟の廃棄を軸に論じた(中谷「日英同盟廃棄から学ぶ「強固な日米同盟」実現の鍵」『Wedge』12月号)。ほかに、第一次世界大戦に関する国際オンライン百科事典に、ワシントン会議の目的・経過・意義を解説する記事を寄稿した。またワシントン会議・体制を共通テーマとする一般公開の研究会でも発表した。他に、ここ2年の内に、国際連盟の集団安全保障との関係を軸に戦間期の日本外交を再評価する研究書や、ワシントン会議後の日本外交を代表する外務大臣である幣原喜重郎の評伝2冊が発表された。これらの成果を本研究に積極的に取り入れるとともに、従来の研究との比較の中で、その意義を関係研究者と社会に紹介するために、書評の執筆や書評報告を行った(中谷「書評 樋口真魚『国際連盟と日本外交──集団安全保障の「再発見」』東京大学出版会」『帝京社会学』35号;中谷『書評報告 種稲秀司『幣原喜重郎』吉川弘文館、2021年 、熊本史雄『幣原喜重郎』中央公論新社、2021年 ──その意義と論点』など)。
3: やや遅れている
公刊資料および先行研究と関連する国際政治理論の検討は順調に進み、成果も一部公表できているが、コロナ禍の影響で2021年度も米英の現地文書館での資料調査が実施できなかったため、やや遅れていると評価した。
(1)コロナ禍の状況にもよるが、アメリカおよびイギリスの現地文書館での調査をできるだけ早期に実施する。(2)近年、ワシントン体制や戦間期国際秩序をめぐる理論的・思想史的・国際法学的な論考が多数発表されているので、本研究の外交史的成果との相互関連・整合性の検証を一層積極的に行うことで、コロナ禍の影響で不足している資料分析を補う。(3)上記(2)に関連して、戦間期の平和的秩序の変更論と現代国際理論研究における合理的戦争原因論の異同を検証する。こうすることで、ワシントン体制、ひいては国際秩序の新たな評価軸を創出できないか検討する。
コロナ禍の影響でアメリカおよびイギリスの現地文書館での資料調査が今年度も実施できず、次年度で実施するために次年度使用額が生じた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
ヒストリア
巻: (285) ページ: 41-49
1914-1918-online. International Encyclopedia of the First World War, ed. by Ute Daniel, Peter Gatrell, Oliver Janz, Heather Jones, Jennifer Keene, Alan Kramer, and Bill Nasson
巻: なし ページ: オンラインのため無し
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Wedge
巻: 33(12) ページ: 74-76
帝京社会学
巻: (35) ページ: 145-164
筒井清忠編『大正史講義』ちくま新書
巻: なし ページ: 235-254