研究課題/領域番号 |
19K01503
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
浅羽 祐樹 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (70403912)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日韓交渉 / 争点連関 / ウインセット / 認識ギャップ / パブリック・ディプロマシー |
研究実績の概要 |
本研究は、1965年の請求権協定、90年代の河野談話やアジア女性基金、2015年の「慰安婦」合意など歴史問題に関する日韓交渉時に、双方の政策決定者が安保協力との争点連関や共通の同盟国である米国からの期待、国内世論による受容可能性をどのように認識していたのかを明らかにするものである。 初年度である今年度は、外交交渉に関するマルチレベルゲームの分析や観衆費用などに関する知見を渉猟し、理論的な土台を構築することに努めた。同時に、1965年の請求権協定に関して、予備的な実証分析も行った。 成果は次のとおりである。第1に、韓国に関する入門書を共著で刊行し、韓国政治や南北朝鮮関係に関する章に加えて、「韓国外交における日韓関係」に関する章を担当した。そこではまず、韓国外交の変容を概観するとともに、歴史問題をめぐる日本との認識ギャップや、北朝鮮の核・ミサイル問題への対応といった「戦略的利益の共有」との争点連関について試論的な分析を行った。 第2に、日韓国交正常化交渉の最終局面である第7次会談において、日韓請求権協定がどのように条文化されていくのかの過程について、外交文書などを活用して再構成を試みた。その結果、いわゆる「犬殺し(個人請求権の解決)」の方法をめぐって、双方の政策決定者は金・大平合意や仮調印の後も熾烈に争ったことが明らかになった。「完全かつ最終的に解決された」(請求権協定2条1項)「いかなる主張もすることができない」(同条3項)という成案/規定によって、元慰安婦や元「徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」という「犬」が将来、日韓それぞれの裁判所に提訴することはそもそもできないと当時認識されていたかどうかが焦点である。 第3に、元「徴用工」問題と、輸出管理や日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の間の争点連関に関して、論壇誌への寄稿を通じて、研究成果の社会還元を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染拡大によって、当初2020年3月に予定していた海外調査は実施できなかったものの、初年度に予定していた先行研究のレビューを通じた理論的な土台の構築と予備的な実証分析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、1965年の日韓基本条約や日韓請求権協定の締結に至る国交正常化交渉の過程、それに1990年代に慰安婦問題が日韓の政策担当者の間で外交問題として登場し、日本政府が河野談話やアジア女性基金の設立という形で応じるまでの過程について実証的に分析する。前者については、先行研究においてもほとんど手つかずのまま残っている第7次会談における条文化過程に関する精緻な分析が鍵になる。後者については、木村 2020や木村・田中・金 2020などの最新の研究成果も参照しつつ、いかに差別化を図ることができるのか、模索したい。 新型コロナウイルスが終息/収束しない限り、2年目も海外調査の実施は厳しいものと予想されるため、韓国側の関係者に対するヒアリングの実施は無理かもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルスの感染拡大によって2020年3月に予定していた韓国での海外調査が実施できなくなったため。
(使用計画)新型コロナウイルスの状況次第だが、当分の間、海外調査の実施は厳しいものと思料されるため、その分の執行は次年度も見送るのがむしろ妥当であるかもしれない。
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