研究課題
2021年度は、まず同年4月に開催されたISA(世界国際関係学会)の年次大会において、本研究の理論枠組みに関する研究成果を発表したが、そこでパネルの参加者から有益なフィードバックを得ることができた。本報告では、国際関係論における規範研究と組織論における実践理論および政策科学論の理論(主に政策フィードバック理論)を融合し、国際制度における国家間協力の動態を説明する理論枠組みを提示したが、その内容を説明する際に、各理論の概念に付随する専門用語をそのまま使用したため、一つの理論枠組みのなかにいくつもの異なる概念が存在しているかのような印象を一部聴衆に与えてしまった。各概念が論理的に結合し、一つの理論枠組みを形成していることを印象づけるには、それらの専門用語を整理し、一つのあらたな用語のもとに統合することや自身の理論枠組み自体にも独自の名称を付与することが必要であることを認識し、その後その作業に取り組んだが、他の業務により作業が中断されることが多々あり、いまだ完了するにいたっていない。また2021年度は、同年12月に開催された国際安全保障学会の年次大会でも研究発表を行った。この報告では国際関係論における規範研究の発展とその成果および問題点について自らの見解を述べたうえで、国際規範の変化とそのアクターへの影響を実証的に捉えるためにはいかなる研究手法が必要であるかについて考察を行った。その答えの一つとして、本研究で行っている規範理論と実践理論の融合の可能性について説明を行った。
4: 遅れている
研究が遅れている最大の理由は、過去3年間コロナ禍により海外渡航ができず、事例研究に必要なデータを十分に収集できなかったことやコロナ禍の初期の段階で国際学会が中止になってしまったことである。データが十分に収集できないことは、理論研究の進展にも悪影響が出ていると思われる。
2022年度の最優先事項は、前年度にできなかった理論枠組みに関する研究成果を学術誌に投稿することであるが、この目標は今年度前半中に「研究実績の概要」欄に記した今後の課題に関する作業を完了させたうえで、今年度後半に成し遂げる予定である。本研究の更なる推進には事例研究に必要なデータ収集を行う必要があるため、今年度は過去3年間実施出来なかった国外での聞き取り調査を是非とも実施したいと考えている。しかしながら、今年度中に計画調書に記載した全ての関係諸国を訪問することは不可能であるため、本研究の事業期間を1年あるいは2年程度延長することを前提とし、少なくとも2年がかりでデータ収集を行うことを計画している。
次年度使用額が生じた理由は、予定していた海外調査がコロナ禍によって実施出来なかったことにより、助成金で計上していた旅費が全額未使用となったためである。2022年度も海外調査が実施できないとなれば、科研費の執行期間を1年はもとより2年以上延長せざるを得ないと考えている。
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