最終年度である2022年度の研究成果として、研究代表者(佐々木)は、2022年5月に開催された関西アメリカ史研究会において「米国の比較政治学者による政治発展モデル構築に向けた知的営為:社会科学研究評議会(SSRC)創設の「比較政治(学)委員会(CCP) の1960年代中葉の活動に焦点を当てて」と題する報告を行った。またこの報告を基に、比較政治委員会の政治的近代化論に関するモデル構築に向けた研究活動とその成果に関する論考を執筆し、脱稿した。この論考は、2023年度中に刊行される関西アメリカ史研究会(編)『アメリカが創る世界、世界が創るアメリカ―新しいアメリカ史叙述を求めて』(昭和堂)中の一章として掲載される予定である。研究分担者(中嶋)も、夏季休業を利用してロックフェラー・アーカイブ・センターを訪問し、「国家安全保障研究委員会」の活動に関する一次資料、またコロンビア大学図書館に所蔵されている関連資料の閲覧/収集に従事し、今後研究成果をまとめる上での準備作業に従事することができた。 4年間(一年間延長)に亘る本研究によって得られた知見としては、第一にSSRCによって戦後創設された社会科学の各ディシプリンを包含した専門委員会の研究活動の特色は、単に冷戦下の国家に奉仕する学知の構築に求められるだけではなく、個別事象から一般モデルの構築図るという純学問的な動機を強く抱いたものでもあったこと、従ってその意味で、これらの委員会の活動を専ら「冷戦的学知」として規定することはできないこと、第二にそのような目的を持った研究活動に従事したものの、人間/国家行動に関する一般モデル構築にまでは至らなかった点、である。ポスト冷戦期入って政治学を初めとする米国の社会科学研究が冷戦期の学問的方法論や概念をどのように継承しながら新たな展開を見せたのかという点は、今後の課題としたい。
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