研究課題/領域番号 |
19K01516
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
クロス 京子 京都産業大学, 国際関係学部, 准教授 (40734645)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 移行期正義 / 東ティモール / サブナショナル紛争 / アジア / フィリピン / 補償・賠償 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究成果の一つは、“The Pursuit of Justice, Truth, and Peace: Reflections on 20 Years of Imperfect Transitional Justice in Timor-Leste,” をAsian Journal of Peacebuilding から公刊したことである。本論文は、東ティモールの独立から20年間の間に実施された、刑事裁判、和解、補償・賠償、治安部門改革に関する一連の移行期正義の取り組みを振り返り、移行期正義を長期的・包括的に評価することの重要性を論じるものである。本研究は、一昨年度実施した現地調査の成果も盛り込み、取り残された被害者への補償がいかにして実施に至ったのか、その経緯を移行期正義の中間評価に関連付けて論じた。 また、これまでのアジアのサブナショナル紛争に関する文献調査に基づき、「アジアの紛争と平和への取り組み」を執筆し『現代アジアをつかむ』において公刊した。本論文では、スウェーデンのウプサラ大学平和紛争研究学部・紛争データプログラム(UCDP)のデータなどを用い、アジアにおける冷戦崩壊後の紛争は、首都から離れた国境地帯などの周辺部で散発的に長期にわたって戦われる分離独立紛争であることを述べ、こうした特徴を持つ紛争に対して必要とされる平和構築支援について、インドネシアのアチェや、フィリピンのミンダナオ等での平和構築の取り組みの事例に言及しながら論じた。 さらに、国際刑事裁判所が本格的に捜査を開始したフィリピンの超法規的殺人の対象に、先住民指導者層を含む「左派」勢力が含まれることから、分離独立紛争と先住民族が抱える歴史的不正義の関係を紛争の歴史から分析する事例研究に着手し、「東南アジアにおける人間の安全保障」研究会で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は昨年度同様、新型コロナウィルスの感染拡大のために、現地調査を行うことができず、予定していた現地調査を実施することができなかった。一方で、ビデオ会議システムを用いた研究会等に参加し、海外の研究者らとネットワーキングすることができた。ただ、やはり現地調査ができなかったことから現地関係者とのネットワーキングが難しく、論文執筆に必要な情報を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には大学から許可を得て、現地渡航をし調査する予定である。また同時にビデオ会議システムを用いてインタビュー等を実施することも引き続き検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査ができなかったために、旅費と現地コーディネーターへの人件費が発生しなかったため。渡航ができるようになれば、短期間でも現地調査を増やすことを検討している。
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