研究課題/領域番号 |
19K01521
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古城 佳子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30205398)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際制度 / 多国間主義 / グローバル・ガバナンス / 国際経済組織 |
研究実績の概要 |
本研究は、一旦構築された多国間国際制度において、加盟国間のその後の力関係(勢力分布)の変化が既存の国際制度にどのように制度的な変化を与えるのか、そのメカニズムを明らかにすることを目的としている。具体的には、第二次世界大戦後に構築され現在まで存続しているGATT/WTO、IMF、世界銀行を事例として取り上げる。これらの国際制度を事例として取り上げる理由は、国際経済分野では国際制度がグローバル・ガバナンスに果たす役割が大きいとみなされてきたこと、今日に至るまで加盟国数を増加させて主要なグローバルな国際組織として存続していること、国際経済組織であるため加盟国間の力関係を経済力の指標によって測定することが可能であることからである。本研究は、特に、現状変革国と現状維持国との間における代表性の確保と多国間国際制度維持の責任分担に関する調整に焦点を当てる。 2019年度は、これまでに行ってきた国際制度論、グローバル・ガバナンス論についての理論的な考察に加え、特に、国際制度と加盟国との関係の分析視角として、多国間主義(multilateralism)論と本人-代理人論(principal-agent theory)を精査し、加盟国の国際制度に対する認識が重要であるという知見を得た。事例として取り上げる国際制度は、どれも第二次世界大戦後にアメリカが主導的に構築したものであり、アメリカは現状維持国とみなされてきたが、近年アメリカからの変革要求が高まっているため、本研究の基本的なデータとして、国際制度に対するアメリカ政府の認識について大統領および国務長官の演説の内容分析を行った。この基本的な分析から、アメリカ政府が国際制度を本人―代理人の視点で認識する傾向が強くなってきたことが確認できた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基本的なデータとして、国際制度に対するアメリカ政府の認識についての確認することが必要であるため、第二次世界大戦後から現代に至るまで、大統領および国務長官の演説の内容分析を行った。研究実施計画で述べた計画の内、加盟国間の分担金のデータについては、概ね完了したが、加盟国間の勢力分布については、さらに検討を加えることが必要である。国際制度の創設時のしくみについてはIMFと世銀については概ね完了したが、前述した基本的データの収集を優先したため、GATTについては次年度に繰り越すことにした。また、多国間主義に関する考察を、雑誌論文とワークショップにおいて発表し、フィードバックを得た。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、昨年度からの課題についてのデータの収集を行うとともに、変革要求についての要求についての資料を調査する予定である。新型コロナ・ウイルスの感染拡大により、海外出張によるデータ収集を行うことが困難になることが予想されるため、web上で公開されていない資料についての収集は後回しにする必要が出てきたが、勢力分布の変化の測定についての検討を進め、勢力分布の変化と変革要求の関係についての質的な資料の収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末に海外出張を予定していたが、新型コロナ・ウイルスの感染拡大により出張を行わえなかったため、次年度使用額が発生した。2020年度も資料収集のための海外出張が行える状況であれば、それに使用するが、行えない状況であれば、資料収集のための研究補助者を増やして、資料収集とデータ収集の作業に当てる。
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