研究課題/領域番号 |
19K01525
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
栗栖 薫子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (00294968)
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研究分担者 |
エルカン キビリチム 神戸大学, 国際連携推進機構, 特命講師 (60825868)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国連 / 国連総会 / 言説分析 / テキスト分析 / グローバルガバナンス / 価値 |
研究実績の概要 |
2021年度は、国連総会における主要国(常任理事国と、経済的寄与の高い日独)が、グローバルガバナンスにかかわる価値に対しどのような姿勢をとってきたのかについて引き続き研究を行い、周源(神戸大学)との共著で英語論文として公刊した。国連の掲げる価値について主要国がどの程度支持しているのかについて、国連の目的や原則となっている平和と安全、人権、貧困からの脱却といった価値についての認識を、国連総会の一般討論演説のデータを用いることにより、政府代表(首脳レベル)の発言をテキスト分析し、明らかにした。第一に、主要国の政府代表の認識は、1990年代から今日までに変化してきたのか、第二に、主要国の姿勢を対比するとどのような特徴がみられるのか。第三に、特定の価値について、主要国の発言はポジティブなものなのか、ネガティブなものなのか。 既存の研究は、国連総会における投票行動の分析に焦点があててきたが主要国の発言については必ずしも研究がなされてこなかった。本研究では、国連総会における主要国の発言を、コンピューターによる自動テキスト分析にかけ、その結果を精査し論文化した。これにより主要国のそれぞれの姿勢を発言内容から対比することが可能となった。発言を見る限りは、ヨーロッパ主要国の政府代表は、少なくとも総会における発言において、必ずしも人権や民主主義について他国よりも強調するわけではないことがわかる。本論文は、Zhou and Kurusu, "How Major Powers Diverge on Global Governance? Evidence from the United Nations General Debate"として、Kobe University Law Review Vol.54に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症拡大が収束することを期待したが、依然として感染症は拡大し、在外研究の制限もあり、国内での対面調査もまた困難であった。そのため、インタビュー調査という当初の研究手法をある程度断念する必要性が生じた。オンラインでのインタビューも可能ではあるが、面識のない政府関係者に対して、本来は信頼関係に基づくはずの長時間のオンラインインタビューを行うことは必ずしも容易ではない。 他方で、研究の一部について、主要国の認識の変化を国連総会議事録に基づき分析する手法を導入した。また日本社会における価値の受容の分析にも研究の視野を広げることにより、当初の研究計画のある程度の変更を行ってきた。たとえば、日本政府が国連総会で推進した価値としての人間の安全保障について、国内の社会における履行の実態調査に参画した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、首脳レベルの発言に限定される国連総会の一般討論演説に資料を限るのではなく、国連総会会期における政府代表の発言も収集し、定性的な分析を行っていく。これによって、第一に、定量的なテキスト分析による結果が定性的な言説分析によって支持されるのかどうか、第二に、2021年度の分析結果を支持する場合には場合には、さらに主要国の発言の特徴についての新しい発見が見いだされると想定している。本研究で提示した混合的手法については、定性的な資料分析と定量的なテキスト分析の総合によって代替していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の引き続きの拡大により、インタビュー調査のための海外出張分の支出が行われなかったためである。また代表者は7か月間、アメリカでの在外研究に従事していたため科研費での支出が少なかった(この在外研究は2年間延期になっていたものである)。
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