研究課題/領域番号 |
19K01531
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
廣部 泉 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (80272475)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日米関係 |
研究実績の概要 |
2019年度に実施できた資料調査で入手したウィリアム・R・キャッスル元駐日大使関係資料の分析を継続した。キャッスル関係資料は膨大で、アメリカでの資料収集を予定していたが、本年度も昨年度同様、コロナ禍によりアメリカ側の対象文書館や大学図書館が閉鎖されたため実施がかなわなかった。昨年度にはメールでのリクエストに対応して、資料の一部をスキャンしてデータを送信してくれたフーバー大統領図書館の担当者も、本年度は応答がなくなってしまった。そのため本年度はキャッスルら米共和党関係者とコンタクトを取り続けた日本側の人物の資料の調査に多くを割いた。具体的には、国立国会図書館憲政資料室所蔵の牧野伸顕関係文書、野村吉三郎関係文書、樺山愛輔関係文書、並びに外務省外交史料館所蔵の須磨弥吉郎関係文書を中心に調査を行った。昨年度は閉鎖期間を経て抽選による厳しい入場規制が課されていた両館であったが、国会図書館の方は平日午前の一定時間に入場すれば抽選が免除されるようになり比較的自由に研究できたが、外交史料館は厳しい予約制が課され困難を極めた。両館で入手できた文書の中から、キャッスルからの書簡やキャッスル宛の書簡を発見することができた。2019年度に収集したアメリカ側の資料とそれらを突き合わせることで、1932年の大統領選挙に敗れて翌年に下野したのちも、日本の有力者がキャッスルをはじめとする米共和党関係者とつながりを持ち続けていたこと、またそのつながりの質について分析することができた。特に在米日本大使館が、米側が民主党政権となったのちも、民主党関係者との人脈形成に失敗し、共和党関係者との関係に依存し続けたことが明らかとなってきた。また、その関係が日米戦争を経ても生き続け、戦後、比較的早く復活したことも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍によってアメリカの文書館が引き続き休館中で、予定していたアメリカへの資料調査が実施できなかった。また、国内では、国会図書館や外交史料館は、昨年度に比べ開館時間が増加したが、いまだにコロナ禍による制限が課されており、以前のようには研究がすすめられなかった。そのような国内外の事情により、研究の進捗にやや遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまで収集した資料の分析を進めると共に、昨年度、一昨年度と予定しつつも実施できなかったアメリカにおける資料調査をようやく実施する予定である。根本史料のキャッスルの日記をはじめとする関係資料の調査を継続すると共に、メリーランド州の米国国立公文書館所蔵の国務省関係資料や米国議会図書館所蔵のフーバー政権以前の政権関係者の資料、アイオワ州のフーバー大統領図書館、また、スタンフォード大学フーバー研究所所蔵の資料も収集する予定である。それらを得たうえで、米国側の資料でつながりが新たに確認された日本人関係者についての資料を日本国内で収集する。それらを最終的につなぎ合わせて関係の実態を明らかにし研究としてまとめ、2023年4月に開催予定のアメリカ歴史学会で発表すると共に、そこでの意見交換をもとに研究論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により国内外における資料調査などが計画通り実施できなかったため。これまで実施できなかった海外資料調査の分も含めて、本年度の資料調査はより長期にわたって実施する。
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