研究課題/領域番号 |
19K01533
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
吉留 公太 神奈川大学, 経営学部, 教授 (00444125)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際政治史 / 冷戦 / アメリカ外交 / ドイツ統一 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、冷戦終結期の主要な事象を「冷戦終結過程」という一つの歴史的局面として把握し、近年公開が進展しつつある欧米諸国の公文書読解を通してその全体像に接近しようとするものである。その中でも、ヨーロッパ冷戦の柱であったドイツ分断の克服過程とその国際的な影響を一つの柱として研究を進めている。 本研究費の交付初年度は、主に、1)1989年から1990年のドイツ統一に関する国際交渉を分析する上で必要となる史料の収集と読解、2)ドイツ統一交渉に大きな影響を及ぼした当時のアメリカ外交とアメリカ国内政治状況の把握、3)冷戦終結過程の論点を概念化するための基礎となる時期区分論と性格規定の検討作業に取り組んだ。 このうち、1)に関する史料面での具体的成果は、本報告書の「現在までの進捗状況」に記したとおりであり、アメリカとイギリスにおいて冷戦終結過程の国際交渉を分析する基礎となる史料収集を行った。また史料開示状況については、本項目末尾でも触れた日本政治学会での報告を行った際に紹介して学会会員と情報を共有した。2)に関しては、共著単行本所収の担当章にジョージ・H・W・ブッシュ政権期の国内政治と外交について執筆した(校了して見本印刷済、2020年5月刊行)。3)については、冷戦終結過程の性格規定について2019年10月の日本政治学会研究大会で報告を行い、学会会員からの批評を仰ぐとともに、2020年1月に刊行された事典において冷戦期の外交史研究と地政学概念との交錯に関する項目を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、欧米諸国の公文書読解を通じて、冷戦終結過程の複合的な国際交渉を分析しようとするものである。それゆえ、研究活動を進めてゆくうえで、解禁された公文書の開示状況の把握と実際に開示された史料の収集を行うことが重要である。この点に関して本研究費の交付初年度においては、新型コロナウィルス感染症による影響から史料収集日程の練り直しを余儀なくされたものの、史料収集を概ね計画通り行うことが出来たため、上記区分欄に示した評価を下した。 具体的には、以下のような史料収集を行うことが出来た。まずジェームス・ベーカー元国務長官文書(アメリカ、プリンストン大学)が一般研究者に対して開示されたことが確認できたため、現地に赴いて史料を収集した。また、イギリス国立公文書館においても1989年から1990年にかけてのイギリスと欧米諸国との外交交渉に関する史料開示が進んでいることを確認できたため、同館に赴いて史料を収集した。
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今後の研究の推進方策 |
本科研費の交付2年目にあたる2020年度前半においては、2019年度に収集した一次史料の精査と関連文献の読解を進めつつ、研究動向をしっかりと把握することに努めてゆく。2020年度後半においては、関連文献の精査と研究成果の活字化を行うとともに、必要な一次史料調査を行ってゆく。2021年度においては、一次史料の精査と関連文献の読解を継続しつつ、関連学会での報告を行ったり、論文等を執筆したりするなど研究成果の公表にも適宜取り組んでゆく。なお、新型コロナウイルス感染症の流行によって史料調査のための海外渡航が難しい時期が続く場合に備えて、2020年度においては、国内で入手可能な新聞史料や関連文献の読解を精力的に進めることで、渡航が可能になった際に時間を捻出しやすくするように備えておく。このように研究資金と研究時間の効率的で柔軟な運用を心がけながら研究を推進してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費の交付初年度末に実施した史料調査において、その一部日程を新型コロナウィルス感染症の影響により短縮して旅程を組み直したため、次年度使用額が生じることになった。交付2年目においては、当初から交付が予定されている助成金額と合わせて、史料調査や関係学会における研究状況の把握、そして必要図書の購入などを進めてゆく。引き続き研究費の効率的で計画的な運用に努める。
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