研究課題/領域番号 |
19K01534
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研究機関 | 国際大学 |
研究代表者 |
熊谷 奈緒子 国際大学, 国際関係学研究科, 准教授(移行) (10598668)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 和解 / 謝罪 / 国家補償 / 共感 / 赦し / 対話 |
研究実績の概要 |
本研究は、第二次大戦後の戦後補償の和解過程において生ずる謝罪と赦しの逆行 (加害側による謝罪の否定と被害側による被害の政治化)という不安定性は、「共感」によ って克服できると考え、共感の概念を明確化し、共感が和解を導く過程を論理的実証的に研究する。和解のプロセスと通常理解されている「加害被害事実の確認、謝罪、被害者によるその受け止め、赦し、そして相互信頼の回復と関係の再構築」という流れにおいて、「共感」の位置づけが必要になるという議論を提示するものである。 本研究は、共感の議論が進んでいる心理学、哲学、宗教学での議論に基づき、相手の立場を相 手の視点で理解するという共感が、加害被害間の相互信頼を生む過程を、明らかにする。そして4つの事例(米軍捕虜虐待強制労働問題、ナチスドイツによる東欧強制労働問題、中国 人強制労働問題、東京大阪の空爆被害救済)で、共感に基づく和解の理論を実証研究する。令和元年における研究実績は、基礎概念(和解、共感、尊厳、謝罪)についての概念・理論書の読み込みと、4つの事例研究の一つである東京大空襲についての事例研究を行った。 概念については、外交における謝罪のありよう、世代、社会の言論状況、歴史認識問題にまつわる感情自体が「感情の記憶」として歴史的記憶の一つとなってゆく過程、赦しの逆行の背景にある人権の道徳的絶対化などの和解過程に生ずる多様なダイナミズムを浮き彫りにし、それらが共感に及ぼす影響について考察した。東京大空襲の事例研究については、研究会での報告を行い、フィードバックをもとに、さらに研究を進めている。国家補償が実現することで和解が達成するという前提自体への疑義、国家を訴えることの多義性の把握の必要性などが、今後の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概念把握と精緻化は予定通りに進んでいる。ただし、事例研究が若干遅れている。令和元年は中国人強制労働問題についても研究予定であったが、関連のフィールドワークと聞き取りができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
概念の精緻化の継続とともに、事例研究のスピードを上げてゆきたい。まずは中国人強制労働問題について、米軍捕虜虐待問題の国内でのフィールドワークを行い、これらの海外フィールドワークを、新型ウィルスコロナ感染拡大状況の終息と海外渡航の再開の状況になり次第、始める。また最後の事例であるナチスドイツ支配下の東欧労働者強制労働問題は、その後に始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内フィールドワークと聞き取りがすべて実行できなかったため。
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