本研究は、戦後補償において、謝罪や赦しが覆されない持続可能な和解の条件として「共感」の役割に注目した。「共感」に影響しうるの4つの要素、「被害者と加害者の同一社会所属性」、「加害者による被害性への理解」、「加害行為の政治的妥当性の認識」、そして「加害者被害者双方の記憶の抑圧」の動態を実証研究した。事例は、ナチスによる東欧強制労働、旧日本軍による米軍捕虜虐待と中国人強制労働、そして米軍による日本空襲である。前二者要素が共感を高める一方で、「加害の政治的妥当性」を被害者側が認めることはなく、「記憶の抑圧」は被害の「忘却」への被害者の抵抗となること、政治的経済的影響が存在することが明らかにされた。
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