研究課題/領域番号 |
19K01542
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
奥村 保規 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90383950)
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研究分担者 |
糟谷 祐介 神戸大学, 経済学研究科, 講師 (20792419)
平田 大祐 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40754809)
北原 稔 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (80468727)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マッチング / 保育所 / 耐戦略性 |
研究実績の概要 |
本年度は,主に保育所マッチングを含むマッチングにおける自身の好みの虚偽申告の問題を扱った。つまり,メカニズムに参加する個人ないしはグループが,自身の好みを虚偽申告するインセンティヴをもたないようなメカニズムはどのようなものかを明らかにした。 まず,個人では虚偽申告をするインセンティヴをもたないものの,集団だと虚偽申告をするインセンティヴをもつ場合を議論している。つまり,あるメカニズムにおいて,一人では不可能なものの,何人かの応募者が結託して,彼らの好みを申告すれば,彼ら全員にとってよりよい保育所などにいくことができるということである。既存研究では,一人で虚偽申告のインセンティヴを持たないならば,どのような集団でももたない,という結論が多かったが,ここではそうでないような場合を明示できており,なぜそのような結論が成り立たないのかについても議論している。 次に,虚偽申告にかんして耐戦略性よりも弱い概念を導入した。この概念は,個人が他の個人の好みなどについての情報を持ち合わせていない場合を想定している。また,それを簡単な投票モデルに応用して議論することで,理解を深めた。 最後に,好みの虚偽申告以外にも,保育所などの優先順位を決定する自分の現状についての虚偽申告を議論しており,それらのインセンティヴがないようなマッチングメカニズムについて議論を重ねた。それによって,より混乱のないマッチングメカニズムを設計するための含意をえている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,コロナの流行により,予定されていた学会発表が中止となったり,研究打ち合わせが円滑にできなかったりといった問題が発生した。そのため,当初の予定よりは遅れ気味である。 ただし,ZOOMなどオンラインでの学会報告や打ち合わせを行うことにより一定の成果をあげたと考える。少なくとも来年度研究するうえでの貴重な経験を得たと考える。 特に,論文に関しては本来のテーマから派生して,個人の好みなどに関する虚偽申告について議論を重ねることができた。 また,公刊までは至らなかったが,保育所などの優先順位のあり方について考えた論文を執筆した。また,既存研究よりも広いクラスの優先順位ルールのもとでの耐戦略的なマッチングルールを議論した。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり,昨年度はコロナの流行で,やや遅れ気味であった。本年度は,昨年度の反省を活かし,研究報告や研究打ち合わせに際し,ZOOMなどのITツールをさらにうまく利用して,研究を進めたい。
具体的には,昨年度議論した優先順位ルールをさらに一般化するとともに,耐戦略性や安定性などの性質を導けるようなメカニズムがあるかどうかを議論する。そのようなメカニズムが実現不可能であるならば,それらの性質をやや弱めたような性質を導入し,議論を続けたいと考える。また待機児童問題に関連し,マッチの数にも注目したいと考える。さらに,新たな応用例として,アファーマティヴアクションとよばれる差別されているタイプの学生を優先するような優先順位ルールや,学生の多様性に配慮した優先順位ルールなどを議論したい。
また,好みの虚偽申告だけでなく,応募者(児童の親など)の様々な戦略的な行動に焦点をあてたいと考える。例えば,母親が児童を保育所に入れたいがために,わざと早めに職場復帰することや,あえて所得を下げようとしたり上げようとしたりするインセンティヴなどについても考えたい。このようなインセンティヴがあることで,特に母親の人生設計に狂いが生じる可能性がある。そのため,そのような戦略的なインセンティヴをなくすことで,安心して自分らしく仕事と育児を両立できるような制度設計をするうえでの政策含意を導きたと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの流行があり,予定していた学会が開催されなかったり,研究室にいくことができなかったりしたために,違いが生じている。
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