集団の虚偽行動に関する研究については、国際査読誌からの改訂要求に対し、再分析と論文改訂を終え、再投稿中である。集団の協力行動に関する研究は分析を終え、3月にワークショップで研究成果を報告した。今後、セミナーや学会での発表機会を増やし、研究内容をよりブラッシュアップしていく予定である。この研究の目的は公共財ゲーム実験を通して、集団の協力率が個人の協力率と比べてどのように異なるのか、そしてその違いがなぜ発生するのかを検証することである。分析結果としては(1)集団は個人に比べて協力率が低い、(2)集団の方が個人に比べて、混乱による協力率が低い、(3)向社会的な人同士が集団になった場合は、向社会的な個人の協力率と同程度であるのに対し、向自己的な人同士が集団になった場合、および向社会的な人と向自己的な人が集団になった場合は、向自己的な個人の協力率と同程度である、ということを明らかにしている。集団の調整行動に関する研究に関しては、新型コロナウィルスの影響で、実験デザインの修正を余儀なくされた。具体的には、(メンバー同士が顔を合わせる必要のない)チームビルディング課題を考案し、集団への帰属意識の高まりが、集団の代表者の調整行動にどのような影響を及ぼすのかを検証するというようなデザインに修正している。今年度は、修正したデザインをもとに、実験を行い、352人分のデータを収集した。現在のところ、集団への帰属意識を高めるタスクを行ったとしても集団代表者間の調整行動は、個人間の調整行動と比べて大きな差異がなかったという結果が明らかになっている。研究期間全体としては、さまざまな戦略的状況下において集団の意思決定が個人の意思決定に比べてどのように異なるのか、特に、社会的にどのような悪影響を及ぼすのかについて、またそれらの差異がなぜ生じるのかについて、明らかにすることができたと考えている。
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