研究課題/領域番号 |
19K01552
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
戸田 学 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30217509)
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研究分担者 |
笠島 洋一 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (30583166)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 医師臨床研修マッチング / 1対多マッチング |
研究実績の概要 |
本年度は実証研究と理論研究を行った。実証研究は現時点では必要となる備品の整備などが主なものであり具体的な研究に着手するのは次年度以降になる予定である。一方、理論研究は順調に進んでいる。一般的な1対多マッチングモデルの安定マッチングにおいて定員を下回る採用実績しか得られない医療機関に助成策を実施し応募者の評価を向上することができたならばJRMPメカニズムの結果がどう変化するのかを分析した。1対1マッチングの場合は応募者側の厚生が損なわれることはないが、1対多の場合は必ずしもそうではないことを示すと共に厚生が悪化する者が存在する理由を特定することに成功した。すなわち助成策により応募者が増えたことでそれまでに採用されていた者がむしろ以前よりも順位の低い研修先に移動を余儀なくされる場合に限り応募者の厚生が悪化することが明らかになった。これにより応募者の厚生を悪化させることがないような助成策のあり方がわかる。定員を下回る配属先に採用されている応募者が助成策の影響で配属先が変わる場合でも以前と同等以上の研修先へ移動できるならば応募者全員の厚生が悪化することはない。他方すでに採用されている応募者が移動せずに済むような助成策についても考察している。この場合、すでに採用されている応募者以外の応募者が助成策によって何ら影響されなければ応募者移動は起こらない。そのことはさらに次のような結果を意味する。すでに採用されている応募者以外の応募者のうち助成策の影響を受ける者の人数が空席数を超えなければ助成策はすべての応募者の厚生を悪化させることがない。つまり定員の不足分を超える数の応募者が新たに応募する誘引を持たなければ助成策は応募者全員にとって有害なものとはならない。これは1対多マッチングにおける助成策の有効性に関する限界を明らかする理論研究としては初めてのものでユニークな結果であると自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実証研究については今年度は備品整備、データ収集などの準備作業のみであるが、一方、理論研究は予想以上に進展があった。総合的に判断しておおむね順調に進捗していると考えられる。ただし、今年度得られた研究成果 Akahoshi, Kasajima, and Toda (2019) "Improvement of Rural Hospitals and Its Welfare Consequences" と題した論文を米国ロチェスター大学で予定されていた国際研究集会(Osaka-Rochester Workshop on Alternatives-to-market Design) で発表するはずであったが新型コロナ感染拡大のために中止となり計画に支障が生じたことは予期せぬ事態であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの理論研究をさらに充実させるとともに実証研究に着手できるようさらに準備を進める予定である。ただし理論研究については報告したものに加えて多くの新たな成果が得られつつある状況であり、実証研究よりもむしろそちらへ優先的にエフォートを集中する方が充実した研究へと発展する可能性も大きい。これからも理論と実証のバランスを考慮しながら進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は予定されていた国際研究集会への参加がコロナ感染拡大により相手国において中止されたことなどの理由で予算の消化が行えなかったのが主な理由になる。今後、学会参加が可能になれば予定通りに消化できるものと思われるが、そうならない場合には遠隔会議などを通じて国内外の研究者と情報交換を行うとともに資料収集、データ整備に予算を使用することとしたい。
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