研究課題/領域番号 |
19K01552
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
戸田 学 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30217509)
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研究分担者 |
笠島 洋一 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (30583166)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マッチング / 医師臨床研修 / 過疎地医療 / 学校選択問題 |
研究実績の概要 |
本年度は "Singles monotonicity and stability in one-to-one matching problems" と題した論文の結果をさらに改訂拡充することに注力した結果,2023年11月にゲーム理論分野におけるトップジャーナルの1つである "Games and Economic Behavior" に本論文がアクセプトされ,2024年1月発行の第143号に掲載されたことが最も大きな研究実績である.本論文は1対1マッチングを前提に相手を見つけられなかった者に対する評価が補助金など何らかの要因で高まる場合,変化前と変化後で社会全体の厚生がどのような影響を受けるかを分析しようとするものである.特に補助金を得た者と同じサイドにいるが補助金を得ることがなかった者たちの社会厚生を問題にしている.彼らの厚生を悪化させないこととマッチングの安定性とが両立可能であるかが1つの大きな論点であるが本論文はそれが一般的には不可能であることを示している.その際,既存の文献において「人口単調性」と呼ばれる条件との関係が改訂作業を通じて明らかになり本論文の結果は人口単調性とは独立であることを示すことができたことはきわめて重要である. さらに "Improvement of rural hospitals and its welfare consequences" と題した論文を2023年4月と5月には早稲田大学と慶應義塾大学の研究会で報告し,さらに6月にはスペインの University of Girona で開催された国際学会において同じ論文を発表して国内外の研究者と意見交換を行う機会を得た.現在は,rural hopsital が定員の一部を分離したりあるいは定員を増加させた場合を考えに入れて論文の結果をさらに拡充することを企画している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように評価の高い査読付き国際ジャーナルに論文がアクセプト掲載されたことは研究が順調に進展していることの証左であるといえる.またコロナの影響が収まりスペインにおける学会で対面により論文発表を行うことができたことも理由としてあげることができる.これにより同じ分野の研究者と情報共有意見交換の機会を持つことが可能となり研究のさらなる進展が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
スペインで報告した論文 "Improvement of rural hospitals and its welfare consequences" の改訂作業を継続する中で rural hospital の定員数を分離ないし増加あるいは減少させた場合の効果について研究を開始している.これは本論文をまとめたあとであらためて見出した論点で当初の研究目的には必ずしも含まれていなかった新しいものであり今後の発展に期待している.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響も収束していく中 2023年度には旅費も含めて順調な予算執行ができたが現在も継続している論文の内容について新たな論点が見つかったことで理論的な研究を続けることが適切と思われるためである.次年度は今回の論文を理論的に深めることが主な目的になるので関連する書籍や文献の収集,ならびに可能ならば国内の研究者を招いた研究集会を企画して意見交換の機会を得たいと考えている.
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