研究実績の概要 |
本年度は、これまで続けてきた利他性を組み込んだモデルにおけるメカニズムの設計・分析を引き続き行った。Fehr and Schmidt (1999, QJE)は利他性に関する代表研究であり、理論と実験の整合性の取れたモデルである。 本研究は、Fehr and Schmidt (1999, QJE)で定式化された利他的効用関数を用いたn人所得再分配モデルにおけるメカニズムの設計・分析を行っている。メカニズムに要求する性質として、IC条件として耐戦略性、効率性に関する条件としてパレート効率性、自発的参加条件として個人合理性を考える。それらを満たすメカニズムとしてGURルールとNURルールの2つを定義した。 また、公平性の条件として、受益者間無羨望性と純取引無羨望性を導入した。受益者間無羨望性とは、再分配を受ける個々人の間で所得水準に妬みがないことを要求している。純取引無羨望性とは、再分配の額に関して、個人間で妬みがないことを要求している。 そして、GURルールが耐戦略性、パレート効率性、個人合理性、受益者間無羨望性を満たす唯一のルールであることを証明した。さらに、NURルールが耐戦略性、パレート効率性、個人合理性、純取引無羨望性を満たす唯一のルールであることも証明した。 これらの結果から、利他的個人からなる社会において、望ましい配分を実現するメカニズムがGURルールとNURルールの2つであり、どちらかを用いればよいことが分かった。ただし、どちらのメカニズムがより広い環境で適応可能かは今後の課題である。
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