研究課題/領域番号 |
19K01557
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
無藤 望 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (40706222)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ゲーム理論 / メカニズム・デザイン |
研究実績の概要 |
許容性および頑健性のある遂行概念として、支配されない戦略による遂行を考え、遂行のために社会的選択対応がみたすべき条件(特に十分条件)についての考察を進めた。具体的には、社会的選択対応から各人にとって最良の選択肢を選んで作られる社会的選択関数が耐戦略性をみたすことが重要であることがわかった。そのほかに、Jackson (1992)によるstrategy-resistanceの条件(これは必要条件であることが示されているため、十分条件では当然含まれる)とFlip conditionと呼んでいる条件をあわせたものが、遂行のための十分条件となる。 これらの条件は比較的取り扱いやすいものであるため、様々な応用に適用可能である。例えば、オークションでは、標準的な二位価格オークションによる帰結に、売り手がすべての余剰を得てしまうような帰結を加えて得られるような社会的選択対応が遂行可能であることが示された。マッチングでは、安定的なマッチングの中で片側にとって最適なものだけでなく、すべての安定的マッチングを含むような社会的選択対応が遂行可能であることがわかる。 これらの結果は、 20th Annual SAET Conference(オンライン)、6th World Congress of the Game Theory Society(オンライン)、日本経済学会秋季大会(オンライン報告)、ゲーム理論ワークショップ(京都大学)にて報告を行った。また、論文化には至っていないが、社会的選択対応を遂行するメカニズムの改良も進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
支配されない戦略による遂行のための十分条件について多くのことがわかってきた。遂行するメカニズムを改良する余地が残されていることが今後の課題ではあるが、条件を求めるという点についてはわかりやすい性質が得られていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
ある社会的選択対応が遂行可能であるとわかった場合でも、その社会的選択対応を遂行するメカニズムは一般には多数存在する。現在得られているメカニズムは、一般性を保つ範囲では複雑さを可能な限り減らしたものとなっているが、より特定された環境においてさらに単純化する余地があるかどうかを検討したい。また、現在得られているメカニズムは、支配される戦略の逐次削除による遂行では得たい社会的選択対応が遂行可能とはならないが、支配される戦略の逐次削除による遂行でも同時に遂行できるようなメカニズムが存在するかどうかについても考察を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、学会報告のための出張や、海外共同研究者の来日が軒並み取りやめとなったため、次年度使用額が生じた。2022年度は、状況改善により海外共同研究者の来日がある予定であり、その関連経費として使用することになると思われる。
|