研究課題/領域番号 |
19K01559
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
濱口 泰代 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (70399038)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 独占禁止法 / 課徴金減免制度 / 経済実験 |
研究実績の概要 |
本年度は,コロナ感染予防のため,大学内での経済実験が中止された.そのため,実験データを集めることができなかった. 令和元年度に独占禁止法が改正され,課徴金制度が見直され,その内容を踏まえて,実験デザインを修正していきたいと考えている.特に重要な変更点は,課徴金減免制度を申請するカルテル企業のうち,申請順位が2位以下の企業に対する減免額が,公正取引委員会の裁量により,幅を持った減免率になることが決定されたことである.このことは,改正前の課徴金減免制度においては,減免率が固定的であったため,申請者は最低限度の証拠しか提供しようとしないという問題があったためである.今後は,申請の順位だけではなく,提供される証拠の質によっても,減免率が変わるようになった.つまり,公正取引委員会の裁量が大きくなった改正内容である. 現時点の実験デザインを修正するために,公正取引委員会競争政策センター主催の研究会で,「カルテルの違法性に関する立証問題と規制当局の裁量について」と題して,経済実験の構想について発表した.研究会は,将来的に,同センターのディスカッション・ペーパーとして,本研究の成果を発表するために行われたもので,同センター所属の法学者および経済学者の方から,有益な助言をいただいた. 特に,実験デザインにおいて,被験者の意思決定が違法なカルテル行為であるか否かについて,法学的見地から通常判断されている考え方と矛盾しないように,実験をデザインするように指摘された.この点は,本研究の中心的な構想である,法学的考え方と経済学的考え方をどのように融合するかにも関わることである.次年度の8月に,再度,同センターにおいて,研究発表を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
過去の独占禁止法違反事件において,どのような裁判においてどのような議論がなされてきたかを調べている.その中で,規制当局の裁量の大きさをどのようなパラメータとして,経済実験のデザインに入れるかを検討している. また,違法性の立証問題に関する議論を理解するため,公正取引委員会の研究会やシンポジウムに参加して,知見を深めている.今年度は,オンラインであったが,国際シンポジウムにも参加することができ,最近の独占禁止法の課題について知ることができた. 現在は,コロナ感染予防対策のため経済実験ができず,データが集められないが,今年度の調査研究により,当初の実験デザインの問題点を大幅に改善できたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
公正取引委員会競争政策センターの客員研究員になることが決まっている.同センターの研究会で,独占禁止法の実際の運用や,法学的な解釈の理解をさらに深めることによって,より意味のある実験を実施したいと考えている. 来年度は,できる限り経済実験を再開したい.感染対策としては,ワクチンを接種した学生を被験者として選び,さらにこれまでの実験実施の教室よりも大きい教室で実施することにより,安全に行いたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が実施できなかったため,予算が大幅に余った. 実験が再開できるようになれば,ほとんどの研究費は被験者への謝金として使用する予定である.
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