研究課題/領域番号 |
19K01562
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
野口 雄一 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (60323903)
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研究分担者 |
中泉 拓也 関東学院大学, 経済学部, 教授 (00350546)
藤原 正寛 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 名誉教授 (40114988)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会ゲーム / learning / 不完備契約理論 / VSRPD / 労働市場 / 不完全観測の繰り返しゲーム |
研究実績の概要 |
野口は、社会ゲームの枠組みで一般化するため、学習理論の視点から研究を行っている。本年度は、不完全観測の繰り返しゲームに応用した。不完全観測の繰り返しゲームでは、真の指摘観測確率を学習することは非常に困難である。野口は、それを克服するために"double merging"を提案し、その下では学習が適切に行われることを示した。 また、藤原は、社会ゲームの中でもVSRPD(Voluntarily Separable Repeated Prisoner's Dilemma)の研究を精緻化した。まず、Greve and Okuno[2019] " Tolerance and Behavioral Diversity” では従来よりもよりTorerant な戦略が均衡になることを示した。また、Greve and Okuno[2019]"On Evolutionary Stability of the Fundamentally Asymmetric Equilibrium” では、Fujiwara-Greve and Okuno-Fujiwara (2009)で定義されたthe (strong)neutral stabilityを満たさない均衡(fundamentally asymmetric equilibrium)を分析し、協力者のmatchingのモチベーションを高めることを示した。 最後に中泉は、労働市場において、企業が訓練を労働者に付与する状況について、不完備契約理論を用いて考察した。こう言った状況では、従来の研究では、 企業特殊的訓練を提供することが一般的である。そのため、それがどのような状況で、企業普遍的な訓練が提供されるかについてを考察することが、本研究分野 の大きな課題である。中泉は仮に労働者のみならず、起業家も来季に労働者として雇用されるような状況では、企業家が自らの人的資本の価値を上げるために、 企業普遍的な訓練を付与する場合があることを示し、分散型ブロックチェーンを利用した取引のガバナンスメカニズムの解明、更にはBe to Beへの応用可能性に ついて分析する足がかりを提供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先の研究成果は、研究計画と同等程度と評価できる。特に、野口は繰り返しゲームのなかでも、不完全観測にBayesian learningの成果を応用した研究を行っており、当初以上の成果をあげているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、研究分担者の藤原(奥野)がVSRPDのモデルを精緻化する。特に2019年、2020年を中心に、有限期間の行動履歴の下で、永続的な協力が始まる均衡が存在するかを理論的に解明する。次に、研究代表者の野口がBayesian learningの手法を更に考察し、他の分野にも応用する。中泉もこれまでの研究を分散型ブロックチェーンを利用した取引のガバナンスメカニズムの解明、更にはBe to Beへの応用可能性について拡張する。またその研究交流および研究成果の発表のため、米国への年1回程度の出張を5年間を通じて予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は野口のパソコン購入、中泉が経済実験を行う予定だったが、より理論研究に専念したため、これらの予算は昨年度には支出しなかった。本年度は、Econometric SocietyのWorld Congressがあり、野口はそのための出張旅費を計上するだけでなく、そのための準備により予算が必要となる。更に、中泉もサバティカル期間の実験費用やプロジェクト経費が必要となった。これらは昨年度に支出するよりもより研究の成果の向上につながるため、これらを次年度に繰り越し、本年度に使用する。
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備考 |
口頭発表 野口 雄一 Bayesian Learning with Private Monitoring: Double Merging and Convergence 慶応義塾経済研究所ミクロ経済学ワークショップ 2019年1月11日 口頭発表 藤原正寛「現代社会と行動様式の多様化:自発的長期関係における寛容の役割」、日本政策投資銀行設備投資研究会、2019年7月4日、日本政策投資銀行
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