研究課題/領域番号 |
19K01562
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
野口 雄一 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (60323903)
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研究分担者 |
中泉 拓也 関東学院大学, 経済学部, 教授 (00350546)
藤原 正寛 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 名誉教授 (40114988)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | VSRPD / learning / hold-up problem / firm specific training / general training |
研究実績の概要 |
本年度は、中泉が、マッチングプールでの自発的な企業活動で、不完備契約の状況で企業特殊的もしくは企業普遍的な技能を企業が労働者に提供する状況において、企業普遍的な訓練が普及する条件について考察した。 ベッカー[1964]が指摘しているように、労働者に流動性制約がある場合、企業や雇用主は従業員に企業特殊的な技能を提供する強いインセンティブを有する。それでも企業普遍的な技能を企業が提供するためには、長期契約、なんらかの市場の不完全性などが必要であることが先行研究でわかっている。Nakaizumi[2020]では、完全競争と労働者の流動性の制約があっても一般的なトレーニングが普及する条件を考察した。特に、その際に スタートアップ市場を想定している。スタートアップ企業は倒産しやすく、雇用者でさえ従業員になる可能性があるため、従業員だけでなく雇用主(起業家、またはマネージャー)も一般的なトレーニングを受けたほうがよい可能性がある。Nakaizumi[2020]ではこういった状況で、 一般的なトレーニングを選択するための条件を導出した。 興味深いことに、従業員が雇用者になる可能性があるだけでなく、それ以上に雇用者が従業員になる確率が高くなる必要があることを示した。 それは、雇用主が雇用主であり続ける確率が、従業員が雇用主になる確率よりも小さい場合とも解釈される。これが本科研における今年度の重要な研究成果であり、韓国ビジネス経済学会の年次大会でその結果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により予定していたバンコクでの実験ができず、次年度以降に延期せざるを得なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、まず研究分担者の藤原(奥野)がVSRPDのモデルを精緻化するのに加え、研究代表者の野口がlearningの手法を適用し、behavioralなエージェントに限定した場合、このVSRPDのno information flowの仮定の理論的拡張が可能かどうかという点を中心に考察する。最後に研究分担者の中泉がプラットフォームやブロックチェーンの経済活動の理論的な分析を行う。次年度以降もこういった基本的なスタンスを踏襲するのに加え、中泉は、スマートコントラクトと呼ばれる標準化された契約をシステムにおいてプログラムとして機能させることで取引のガバナンスについて研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で学会出張などができず、また予定していたバンコクでの経済実験ができなかったため。次年度以降、コロナ禍の鎮静度合いを見ながら、海外学会での報告、バンコクを中心として海外での経済実験を行っていく。
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