研究課題/領域番号 |
19K01575
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
松山 直樹 兵庫県立大学, 国際商経学部, 准教授 (80583161)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マーシャル / 潮汐学 / 公正賃金 |
研究実績の概要 |
Covid-19の蔓延が収束しなかったため、2021年度も国内において論文執筆と資料調査を実施した。 前者に関しては、既存の研究では看過されてきたと考えられる、潮汐学的類推がマーシャルの分配論において採用されていたことを明らかにした論文が英文雑誌に掲載された。本研究プロジェクトでは、マーシャル経済学を科学史の観点から再考している。その研究成果のひとつとして、需給均衡理論を成立させる過程で、マーシャルは価値の安定性に関する議論を、天文学的に基礎づけられたクールノーの科学的方法を参考にしていることが明らかになり(2019年度にケンブリッジ大学マーシャル・ライブラリーにて収集した一次資料に基づく)、今回の論文では、価値の安定性の議論を分配論に適用する際には潮汐学的類推を採用したのことを論証した。具体的に言えば、マーシャル経済学において公正な賃金率は、部分均衡理論のように一般化された水準に決定されるものでなく、各地域の慣習等の影響を受けながら調停を通じて決定すべきものであることが示された。 後者の文献調査については、2021年度においても海外での一次資料の調査を断念し、国内において主にデータベースを利用して資料調査や二次文献に関する分析をおこなった。具体的には、本研究プロジェクトの第二課題である「マーシャルとジェンキンの理論的な影響関係」をめぐって2023年度には論文執筆が開始することを念頭において、ジェンキンの経済学方法論ならびにヒューエルの科学方法論に関する資料調査と二次文献の研究を行った。 本研究プロジェクトにおけるマーシャルの経済学方法論の形成と展開との関連において、マーシャル夫人の視点に立つ研究、初期マーシャルによる経済理論研究に関する翻訳プロジェクト、『産業と商業』公刊100周年記念講演会に関する書籍化プロジェクトも展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、コロナ禍における再度の緊急事態宣言が出されたこともあり、海外渡航ならびに国内移動も自粛しなければならなかった。そのため、夏と冬に予定していた英国での資料調査は改めて中止せざるを得ず、さらに9月に予定していた国際学会への参加も見合わせた。 他方、海外での一次資料の調査はやや遅れているが、これまでに収集した資料を再度検討したり二次文献の分析を実施し、本研究プロジェクトの計画全体に大きな遅れがないように研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も昨年度と同様に、Covid-19の蔓延状況によって国内外における資料調査や学会報告を実施することへの制約が予想される。そのため、データベースなどを活用した文献調査を行うだけでなく、新たに海外の各図書館等のデジタルサービス等の利用も視野に入れながら、研究計画の実施年度の変更を含めて柔軟に本研究プロジェクトを進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続きCovdi-19により海外渡航に制限があったため、国内を拠点としてデータベースや二次文献等を活用した研究プロジェクトの展開に切り替えたが、当初計画していた国内外での資料調査に比べると十分な文献調査を展開することができず、繰越金が生じた。繰越分の研究費は2022年度に資料購入費として支出する予定である。
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