研究課題/領域番号 |
19K01576
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
金井 辰郎 東北工業大学, ライフデザイン学部, 教授 (90332022)
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研究分担者 |
楠木 敦 北星学園大学, 経済学部, 講師 (50711420)
宮崎 義久 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (60633831)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 米田庄太郎 / 米田博士講義録 / 一般均衡理論 / 経済学 / 社会学 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究期間初年度であることから、アウトプットまで到達できなかったが、研究計画に予告していた通り、以下の作業を行った。まず、「講義録」以外の米田の既刊の著作(米田 1906, 米田 1913, 米田 1929aほか)、また米田の講義を受けとめた側として高田保馬の著作・回顧録(高田 1946、1948、1949、1955、1957a-1957h、1958a-1958g、1967、1969ほか)を精査し、一般均衡理論導入に対して、米田の果たした役割を既刊文献から検討した。また講義録に関しても、各自の分担(金井:講義録第1、2、4、5、6、7、14、18、21巻、楠木:講義録第22、23、29、30、33、37、38、39、40巻、宮﨑:講義録第41、42、45、46、47、48、49、52、65巻)にしたがい、「講義録」を精読した。また、全巻ノート内の見出しと思われる語句からなるインデックスを作成しつつあり、近日にディスカッションペーパーとして公刊する予定である。インデックス化を終えることができれば、全ノートの範囲・ノート間の重複などに関する資料的な構造情報が明らかになることから、より効率的かつ網羅的に研究を進めることができると思われる。われわれとしては、そのような作業を一刻も早く終え、当初計画のとおり、日本への一般均衡理論導入に果たした米田の役割を、彼が「組織社会学」と呼ぶところの「学問分類論」に見られる方法論的な考察、また「力学的社会学」、「数学的社会学」、また一般均衡理論もその一部と認めていることが推測される「純正社会学」(societics)に特に焦点を当てながら、各ノートを読み進める。インデックス化は全巻に関して行っており、その点は当初計画よりも広い範囲を扱うことになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「講義録」は全67巻という大部である。当初、とにかく順に読むことを考えていたが、年度初めの研究開始に当たって進め方を再度検討し、まずは各ノート内に散見される見出し(と思われるもの)に基づくインデックスを作成し、それをディスカッションペーパーとしてアウトプットしながら、資料内容に当たりをつけた上で研究を進めることとした。その際、インデックス化の下書き作業を外部に発注したが、今年度は、対象となる巻の約半分が納品され、それらについて、研究代表者・分担者・協力者が確認作業を進めているが、まだアウトプットできる段階までは到達していない(が近日に、順次刊行できる予定である)。インデックス化の目的は、各ノートの扱う内容の大まかな把握であるが、この作業を終えることで「講義録」全67巻のテーマの広がりやオーバーラップの程度などが判明する。
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今後の研究の推進方策 |
「講義録」には、①「学問分類論」と称される学問体系の分類論(≒「組織社会学」)、また②(方法的に一般均衡理論に類似する「力学的社会学」あるいは「数学的社会学」を包含する)社会学の「抽象的」理論(≒「societics」≒「純正社会学」)、また③社会の「具体的」研究(≒「societology」≒「総合社会学」)、④リッカート、デュルケム、コント、ジンメル、マルクス、マックス=シェーラー、マックス=ウェーバー、パレートらの社会学説の検討、また⑤哲学・倫理学に関する講義などが含まれる。本研究の目的からは、特にそのうちの①および②を中心に精読を行うが、前項でも触れた通り、インデックス化の作業については、対象を③~⑤にも広げることで、「講義録」全体の構造も同時に明らかにする(米田の「講義録」は毎年行われる複数の同名講義の講義録である性格上、分冊間で、かなりオーバーラップする部分がある。構造を明らかにすることには、「講義録」の資料的価値を確定する意味がある)。大部であり、また自筆ノートであることから文字の判別が難しいなどの問題もあり、完結までにはかなりの時間を要することが推測されるが、可能な範囲でスピードアップを図りながら進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象である「米田博士講義録」は全67巻と大部であり、そのインデックス化(の下書き)作業を外注したが、外注先がそのすべてを年度内に終了できなかった。そのため、次年度においても、同外注先に作業を継続してもらいたいと考えており、そのための予算額を繰り越さざるを得なかった。また、京都への米田に関する取材旅行を複数回企画しているが、もう少し米田の著作、ノート等に関する理解を深めてからにしたいと考え、旅行の日程を次年度に繰り越した。
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