研究課題/領域番号 |
19K01576
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
金井 辰郎 東北工業大学, ライフデザイン学部, 教授 (90332022)
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研究分担者 |
楠木 敦 北星学園大学, 経済学部, 講師 (50711420)
宮崎 義久 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (60633831)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 米田庄太郎 / 米田博士講義録 / 一般均衡理論 / 経済学 / 社会学 |
研究実績の概要 |
分担に従い、研究代表者、研究分担者が各自「講義録」を精読した。また昨年度より外部に委託していたインデックス(「講義録」内の見出しのリスト)の下書きの大部分が納品されたため、確認作業を並行して行った(しかし、資料が大部であることから、これらの作業はまだ終えることができずにいる)。インデックスは、ディスカッションペーパーなどの形式で出版することを検討しているが、著作権上の問題等を考慮した上で慎重に進めたい(現時点ではさしあたり、内部資料として用いることを目的にDVDに保存し、上記確認作業の結果を反映させながら更新していくこととする。DVD:金井辰郎・楠木敦・宮﨑義久・本吉祥子「米田博士講義録:各ノートのタイトルおよび見出しからみたその構造」、2021年3月31日)。 今年度までの研究によって得られた知見は以下のようなものである。(1)「講義録」中の「組織社会学」(「学問分類論」など方法論的な考察)や「societics」(「純正社会学」とも呼ばれる抽象理論に対する米田の造語)に関わるノートにおいて、数理経済学はsocietics中の数ある方針(タルド=ギディングス的な「暗示」、「模倣」、「同類意識」などの概念に基づく心理学的理論や米田(1911)に指摘されているオストワルトの文化学/力学的社会学を含む)の一つに過ぎないものとして扱われている。(2)米田は、海外における数理経済学の現状を踏まえ,経済学または社会学の方法論が「数学的」な潮流になりつつあることは自覚しつつも,societicsの方針としては物足りなさを感じていた。(3)高田保馬への影響という観点から、米田も参加していた経済学読書会の内容を調べることには意義がある。小川郷太郎によるシュンペーター理論の移入など、一般均衡理論導入史の重要なイベントの舞台となった(ことから、さらに調査したい)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「講義録」の精読およびインデックスの下書きの確認を行っているが、当初イメージしていた進度と比べるとやや遅延している。今年度は新型コロナウイルスの流行による、オンライン授業の準備などにかなり時間をとられたこともあり、研究に十分な時間を割くことができなかったことを認めなければならない。しかし、来年度はコロナ下の状況に慣れたこともあり、本来の進度にキャッチアップできるようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
インデックスの下書きの大部分が納品されたことにより、「講義録」の全体像の把握に一歩近づいた。各ノートについて、扱われているテーマ、時期、分量などを図表化して整理し、発展の過程を把握したい(メタデータにより、「講義録」の構造を明らかにしたい)。「講義録」中の「組織社会学」、「純正社会学」の議論を整理し、経済学をめぐる方法論、(数理)経済学の扱いを整理したいが、膨大なノートを読むことが必要となる。米田による既刊の数理経済学に関する論文を精読し、同時代の数理経済学・一般均衡理論と米田の理解を比較したい。「経済学読書会」など、米田・高田周辺にも目を配り、状況証拠からも米田の役割を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
取材旅行を計画していたが、新型コロナウイルス流行により、旅行が不可能になった。「講義録」のインデックスについて、大部分は納品されたが、一部未完了の部分があった。インデックスのディスカッションペーパー化ほか、研究成果の出版・発表を企図しており、事務作業の手伝いに学生アルバイトを雇用したいと考えていたが、今年度は進度が遅れてしまい、雇用できなかった。
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