研究課題/領域番号 |
19K01578
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
久松 太郎 同志社大学, 商学部, 准教授 (60550986)
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研究分担者 |
高槻 泰郎 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (70583798)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 山片蟠桃 / 鞘寄せ / 情報効率性 |
研究実績の概要 |
2019年度は、研究代表者と分担者を中心に、合計4回の研究会(4月25日、5月16日、6月3日、10月15日)を行った。当初予定では、蟠桃の著作(主に「夢之代」)および関連する同時代の文献(中井竹山「草芽危言」、太宰春台「経済録」)の読解と読み合わせであったが、それらを最小限のとどめて、研究打合せの中心的内容を大坂米市場における鞘寄せに関する議論に変更し、そのメカニズムの解明に注力した。第4回研究会では、神戸大学経済経営研究所の神谷和也教授を招聘し、分担者がこれまでの概略を説明し、そのあとで現在までの暫定的なアイデアを代表者が簡単に説明した。神谷教授からはこの問題についての意見(サンスポット均衡による鞘寄せの可能性)をいただいた。しかしながら、このメカニズムを決定づける理論の導出までには至らなかった。 一方で、研究代表者による先行研究の調査(日本大学山倉和紀教授の論文を通じて)において、同時代の西欧経済学者のなかに情報効率性の先駆的貢献をなしたとみなされる人物がいることを知った。具体的には、19世紀初頭のイギリスの経済学者ローダーデールがアイルランド銀行の株価とその配当率の推移のデータを示し、当該銀行の過剰発行による銀行券の減価が株式市場の情報効率性によって同行の株価に即座に反映されることを論証しているというものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の研究計画としては当初、蟠桃の著作(主に「夢之代」)および関連する同時代の文献(中井竹山「草芽危言」、太宰春台「経済録」)の読解と読み合わせを予定していた。しかし、論文執筆の目標を定める過程で、米市場における満期の鞘寄せ問題のメカニズムを解明しておく必要が生じたため、まずはこの問題に関する議論に焦点を当てることに変更した。「研究実績の概要」で触れたように、このメカニズムを説明できる理論の決定打を得ることができなかったこともあり、執筆目標の再設定を迫られることになった。加えて、分担者の在外研究の準備もあり、しばらくのあいだ研究会を開催できなかった。これらの事情により、研究がやや遅れた状態となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はオンラインでの研究会の開催を余儀なくされると予想されるため、研究計画の大幅な見直しが必要である。 本研究は西欧経済学から一旦切り離して山片蟠桃の経済理論を純粋に復元する予定で進めてきた。しかし、2020年度以降は異なる方法で研究を遂行する予定である。「研究実績の概要」で触れたように、情報効率性の先駆的貢献をなしたと考えられているローダーデールを山片蟠桃と対置させ、世界の経済思想史における蟠桃の立ち位置を明確にする作業を行う。研究分担者はすでに大坂米市場の情報効率性について一定の成果をあげているため、研究代表者は、ローダーデールのパンフレットの分析に加え、彼を「現代のefficient financial market economistの先駆者」と位置付けたターナーの研究成果とそれに関連する研究を行った日本大学の山倉教授による一連の研究を再検討する。 オンライン会議では、特に蟠桃の情報効率性概念の明確化を中心的な目的とした蟠桃の著作物の読み合わせを継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
カラー印刷が可能なプリンタの購入を考えていたが、高機能なものを予想以上に安価な金額で購入できた。また、当初予定の変更にともなって必要な文献も変わってきた。さらに、分担者の在外研究が決まり、次年度に当地での研究打合せの費用を残しておく必要が生じた(ただし、新型コロナ問題により分担者は帰国を余儀なくされている)。以上の理由により、次年度使用額が生じた。
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