研究課題/領域番号 |
19K01578
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
久松 太郎 同志社大学, 商学部, 准教授 (60550986)
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研究分担者 |
高槻 泰郎 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (70583798)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 山片蟠桃 / 大知弁 / 情報効率性 / ファーマ / ローダーデール |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度と同様に、新型コロナ感染症拡大防止のため、対面での研究会の開催を避け、オンラインで1回(第15回JET(Japanese Economic Thought)研究会10月19日)、その他メール会議を行った。昨年度の打ち合わせがメール中心となったのは、文章作成を目的とした研究を行ったことに関係している。 4月10日に日本経済思想史学会・第13回西日本例会で「忘れられた日本人経済思想家:山片蟠桃と『大知弁』」と題する研究報告を研究代表者が行った。その際に得られたコメントについて分担者とともに議論を行い、『日本経済思想史研究』第22号に掲載される報告要旨を作成した。分担者も、本課題に関連する研究報告を国内外のセミナーで報告している。本課題に含まれる内容は、分担者が執筆した数点の著述(著書の分担執筆)にも関係しており、それらは2021年に公刊されている。 また、2020度に投稿した論文に対して投稿先雑誌のレフリーからのコメントを得た。コメントの内容が本研究課題の志向とかけ離れていたため、再投稿を断念し、別の学術誌への投稿を考えることに切り替えた。2021年度の後半は、そのための新たな資料収集を行ったり、別の角度からの研究を模索したりした。後者に関して具体的には、ユージン・ファーマに先行するフリードリヒ・フォン・ハイエクの知見を取り入れること、山片蟠桃『大知弁』とほぼ同時期に市場の効率性に関する考えをもっていたと考えられている19世紀初頭のイギリス経済学者ローダーデールの学説をより深く掘り下げることなどが検討された。 さらに、山片蟠桃『大知弁』の英訳作業に着手した。当該著作の現代語訳を一文ずつ行った後に逐次英文化するという手順で行った。ただし、これについてはまだ数ページの作業を終えただけである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
緊急対応で乗り切った2020年度とは異なり、2021年度は、研究代表者が所属する大学において新型コロナ感染症拡大防止のための教育体制が大きく変わり、前半の研究へのエフォートをかなり低めざるを得なかった。加えて、2021年度に投稿していた論文に対する審査結果が届いた時期がかなり遅かったため、次のステップに進むことが難しかった。しかし、年度初めに行った日本経済思想史学会・第13回西日本例会での報告で得られたコメントや投稿論文に対するレフリー・コメントにより、別の角度からの研究を掘り下げる方法を見つけることができ、関連する資料収集や新たな考えの創出という点では一定の進捗をみた。 以上の理由により、現在までの研究の進捗状況について「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の当初計画では、2020年度に投稿した論文とは別にもう1本の論文の執筆を予定していた。しかし、投稿先雑誌のレフリー・コメントを受け、2022年度は方針を変更し、すべての研究内容を1本の論文に集約して仕上げることに注力する。論文は英語で執筆し、ディスカッション・ペーパーにまとめたのちに、海外の査読付き学術誌への投稿を行う。投稿後は、山片蟠桃『大知弁』の英訳の完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
3か年の研究期間のうち3分の2以上が、新型コロナ感染症拡大の影響を受け、研究期間の延長を余儀なくされた。2021年度は、研究期間の延長を念頭に置きながら、支出を抑えてきた。新型コロナ感染症拡大により、当初計画とは異なる使用計画への変更が、次年度使用が生じた最大の理由である。 2022年度は、2020年度および2021年度とは異なり、対面での学会・研究会の開催が行われる機会も増えてきたため、それらへの研究費の充当を考えている。また分担者は、本研究課題に関連する研究について、海外の研究機関に所属する研究者との打ち合わせを考えており、そのための経費への充当が計画されている。
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