研究課題/領域番号 |
19K01579
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研究機関 | 大月短期大学 |
研究代表者 |
伊藤 誠一郎 大月短期大学, 経済科, 教授(移行) (20255582)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経済思想 / ブリテン / 17世紀 / 18世紀 |
研究実績の概要 |
第一に、本研究の前提となる研究をまとめた英語での著作の出版に向けての作業を進め、英国のRoutledge社と、English Economic Thought in the Seventeenth Century: Rejecting the Dutch Modelというタイトルの単著を出版する契約を11月に交わし、2月中に必要な原稿をすべて提出した。第二に、短期公債を紙券として用いるダヴナントの信用論を、論争史の中で分析し、 'Charles Davenant’s idea of credit'として原稿にまとめ、10月にシドニー大学で開催されたオーストラリア経済思想史学会(HETSA)で報告した。第三に、土地銀行諸提案やダヴナントの議論の論争的文脈が、そのあとのジョン・ローの紙券信用の議論にどのように展開されていったかを、発券の組織の基金やその安全性、管理能力といった、人的・社会的信頼性という視点から、ローの『貨幣と商業』(1705)と、同じころ書かれたローの手稿'Essay on a land bank'、その前後に書かれた他の紙券信用に関する文献を調査し、2020年6月に開催される予定であったアメリカ経済思想史学会(HES)での報告を目指し、原稿作成作業を進めた(3月中に中止が決定)。第四に、ジェームス・スチュアートの『経済の原理』における信用論と、アダム・スミスの法学講義と『国富論』における信用論を、とくにアムステルダム銀行についての記述を中心に検討して、3月の国際アダム・スミス学会で報告する予定で、報告原稿、'Adam Smith on banking'を作成したが、大会は中止となった。第五に、本研究の最終目的である、英文での著作の作成に向けた概要ともなるような内容の報告を、2020年5月開催予定の日本英文学会のシンポジウムで行うべく原稿作成を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記研究実績に記した、第一の英語での著作の出版に向けての作業は、2019年度にCambridge U.P.に応募をし、断られ、その後Oxford U.P.に応募をしていたが、こちらも2019年度末に断られた。ただ、その都度いただいたメリットとデメリットについてのコメントを参考にbook proposalを修正し、経済思想史の定評あるシリーズを刊行している英国のRoutledge社に2020年8月に応募してからは、順調に交渉が進み、またレフェリーからも非常に高い評価を得て契約にたどり着くことができた。第二のダヴナントの信用論については、当初の予定通り2019年度内に英語原稿をまとめて、国際学会での報告がなされた。第三のジョン・ローについての調査・研究は、当初、二・三年目、つまり2020年度以降に行う予定だったが、上記のダヴナントの原稿が10月までにできたので、そのあとの時期をこれにあてられた。第四のスチュアートとスミスについては、三・四年目に作業を進める予定であったが、これもはやめに着手できた。ただ、ダヴナントやローについての原稿も同様だが、その論争的文脈を十分に説明する数多くの一次、二次文献については十分に調査をできていない。とくに、スチュアートとスミスについては、その信用論の原理的な説明と、アムステルダム銀行についての、彼ら自身の記述の分析に限定されている。いずれにせよ、これらも本来は本研究の後半に行う予定だったことを考えると、十分に予定より早く本研究が進められていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これも上記研究実績に即して説明する。第一の英語での著作の出版に向けての作業をつづけ、出版社との作業の進捗状況にもよるが、できれば2020年度内の刊行を達成したい。第二のダヴナントの信用論については、引き続きその前後の関連一次資料の収集と調査を、英国の図書館等で行う。第三のジョン・ローについての調査・研究は、ローの初期の英文でのテキストに関するノートをとったが、同時代に書かれた多数の同種の文献については、2020年度に進めたい。新型コロナウィルス伝染の状況次第では、2020年度内に国際学会が開催されることは難しいかもしれないが、原稿作成は進め、国際学会での報告を目指す。第四のスチュアートとスミスについての原稿は、スチュアートもスミスも、ジョン・ローとの関連や、また論争の文脈を肉づける多数の文献については未着手なので、引き続き資料収集と、原稿執筆のための準備ノートの作成を進める。第五の、日本英文学会シンポジウムについては、シンポジウム参加の他のメンバーとの共同研究をなんらかの形で進め、できれば、2021年度の大会報告を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月末からの10日間の英国での資料調査の際に、英国国内での旅費を伴う資料調査を当初検討していたが、新型コロナウィルスの伝染拡大の時期にちょうど重なり、必要最低限の調査以外は取りやめたため、2019年度使用額が残った。2020年度には、同様の費用として利用するつもりである。
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