現代に至るまで金融危機が起こるたびに、それはなにか例外的な悲運のように語られ、道を踏み外した自らを戒めることが繰り返されてきた。しかし、そもそも「近代」というものを作り上げていった近代初期の思想家たちは、危機とは必然的に、そして生来的に我々の社会が抱えているものであり、それを普通ではない、anormalなものではなく、むしろ常に内在するものと考えていた。本研究では金融に関する思想史を振り返ることによって、彼らが知的に葛藤したのは、anormalなものを排除するのではなく、どう共生するかにあったということを、現代人に喚起することに本研究の学術的・社会的意義がある。
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