研究成果の概要 |
本研究は,19世紀前半の,とりわけアイルランドを研究課題とした経済思想家の言説において,自然法思想の影響が強くみられたという事実を明らかにした.本研究の主要な検討対象は,スクロウプ(George Poulett Scrope, 1797-1876)とバット(Isaac Butt, 1813-1879)である.両者は共に権利論をベースにアイルランドの貧困問題の解決策を論じ続けた.ここでは富者の財産権と貧者の生存権との対立が資本の生産力による富の増大によって緩和されることはなく,「市場の言葉」は説得力を持たなかったがゆえに,彼らは「権利の言葉」を用いざるをえなかったのである.
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