研究実績の概要 |
2023年度は、工業統計調査と賃金構造基本統計調査の接続方法とその結果の詳細な解説を論文としてまとめて公表する作業を行った。雇用者被用者マッチデータは、特に労働経済学において研究の蓄積があり、日本でも川口他(2006, Hi-Stat DP)、川口・神林(2010、『応用ミクロ計量経済学』第5章)や伊藤(2017, RIETI DP)が工業統計調査と賃金構造基本統計調査個票を接合したデータを用いて賃金関数の推定を行っている。川口・神林(2010)は、1993年から2003年までのデータを、収録事業所の都道府県番号、市区町村番号、電話番号を双方の調査で照合して接続し、平均7割程度の高い接続率を報告している。本研究では、まず、双方の調査で平成24年経済センサス活動調査のセンサスキーが収録されていることを用いて、そのセンサスキーによる接続を行った。工業統計調査、賃金活動基本統計調査ともパネル化されているため、事業所が調査に参加している限り、接続年(2014年)の前後の年に接続を延長可能である。この方法では2014年には79%と高い接続率を示したが、工業統計調査と平成24年経済センサス活動調査の接続率が低いこと、賃金構造基本統計調査のパネル方向での各事業所の平均観測期間が短いことから、他の年の接続率は大幅に落ち込むことが確認された。そこで、先行研究にならって、事業所の名簿情報の照合による追加的な接続を行い、名簿情報が申請可能であった2006年から2013年の期間においても60%から70%の接続率を達成した。本年度は、この接続方法の検討結果と構築した雇用者被用者マッチデータを用いた生産性分析を内閣府経済社会総合研究所内の勉強会やワークショップで報告し、参加者のコメントから貴重な知見を得た。
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