本研究の目的は,1:既存のバブルの検定をモニタリング検定のフレームワークへ拡張,2:バブルのモニタリング検定の統計的性質の分析,3:モニタリング検定でバブルが検出された場合の検出までのタイムラグの分布の分析,4:モニタリング検定の実証分析への応用,の4点である。令和4年度の研究では,研究実施計画をより発展させ,バブルが検出された場合のバブルの発生時点・崩壊時点・通常の市場動向に戻る時点をそれぞれ推定する方法を考案,その理論的特性の分析を行った。その結果,バブルが崩壊する時点については一致推定することが可能であるが,バブルの発生時点と崩壊から回復する時点については必ずしも一致推定できるものではないことが明らかになった。 一方,これまでに開発したものとは別の検定として,変動タイプのモニタリング検定を新たに開発し,その理論的特性を分析した。その結果,バブルがモニタリング期間の中盤から後半に発生した場合には,変動タイプの検定は,既存の検定よりも検出力が高いことが明らかになった。この特性を生かして,既存の手法と今回の手法を組み合わせたハイブリッドな検定手法を開発することに成功した。 また,モニタリング検定は学習期間中のモデルの安定性を前提としているため,所与の期間中での構造変化に関する統計的推測問題について考察をおこなった。 令和元年度~令和4年度の研究期間全体を通じて,本研究目的に沿った研究成果が得られた。具体的には,バブルの検定をモニタリング検定の枠組みへ拡張し,拡張された検定手法の統計的な性質を分析・明らかにした。特に,複数の検定手法についてバブルの検出力と検出までのタイムラグの理論的な特性を明らかにし,より精度の高い手法の開発へ結びつけることができた。さらに,これらの手法をプログラミング言語GAUSSやRで実装して,株価などの資産価格や仮想通貨の爆発的な挙動を検出した。
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