研究課題/領域番号 |
19K01589
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
唐渡 広志 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (00345555)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 条件付きヘドニック価格指数 / 競売市場 / 世代効果 |
研究実績の概要 |
本課題では,物理的な資産市場における価格決定過程を明らかにするために,市場への流動性を考慮したヘドニック価格モデルの構築方法を提案する。Karato 2020, http://doi.org/10.15099/00020069 において,オークション市場における落札率と価格変動の相関の有無を検証し,対数正規分布にしたがう価格の条件付き期待値の差分を用いて定義した条件付きヘドニック価格指数を提案した。本年度は,中古住宅が市場に出現する可能性を含めた二重の条件付きヘドニック価格指数を計量経済的に計測するための準備を行っている。 住宅所有者がローンの債務不履行に陥った場合,任意売却するか否かの選択が第1にあり,任意売却の段階において取引が成立するか否かの第2の選択が生じる。競売市場の落札価格は,このような二重選択の行動結果を示している。したがって,中古住宅の取引価格には,取引時点の価格トレンドが色濃く反映されている。 一方,新築住宅の一部では,住宅供給者が市場価格の変動を予想することで,着工時期を遅らせる,販売時期を故意に遅らせるなどの行動選択をおこなっている事例がある。このことは,住宅価格の世代効果と取引時点の時間効果の間に乖離を生み出し,価格指数に大きなバイアスをもたらす可能性を示唆する。 研究代表者が過去に行った研究では,住宅が建築された年次の世代効果(コーホート効果),年齢効果(建築後年数)および時間効果を完全に識別することができないことが明らかにされ,世代効果の除外は経年減価率および不動産価格指数にバイアスをもたらすことが示されている。本年度は,物理的な資産の需要者と供給者の双方に,選択を行う経済環境や誘因があるときの,ヘドニック・アプローチによる価格定式化方法を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二重の選択行動を考慮した計量経済モデルを考案し,分析利用するデータの使用目途が立ったため。
|
今後の研究の推進方策 |
物理的な資産の需要者と供給者の双方に,選択を行う経済環境や誘因があるときの,ヘドニック・アプローチによる価格定式化方法を提案し,実証分析を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
在宅勤務期間があったため雇用・人件費の使用が計画どおりに進まなかったため。 次年度は当初よりも雇用・人件費の使用を増やす計画である。
|