研究課題
不動産を含むさまざまな市場ではオークションによる売買が頻繁に行われている。分析に利用されるデータは,実際に売買が成立した商品からなるため,オークション市場での価格にはサンプル・セレクション・バイアスが生じている。ヘドニック・アプローチにおける計量経済学的手法の改善の一つとして,セレクション・バイアスのあるオークション市場価格を利用して,exponential type II Tobit model による価格指数の計測方法を提案した。本研究の第1の特徴は,オークション市場において落札された芸術作品だけを価格指数計測の対象としてしまうことによる標本選択バイアスを回避する手法を提案している点である。統計的なヘドニック価格をモデル化する場合,価格の誤差の期待値はゼロにはならずバイアスをもつ。本論文では,サンプルの選択(落札されたか否か)に関するモデルとアウトカム・モデル(ヘドニック価格モデル)を同時に考慮して価格推定を行う。本研究の第2の特徴は,出品側のオークション・ハウスが提示する参照価格(予想落札価格の範囲)が,入札率と落札価格に直接および間接的に与える効果を統計的に明らかにしている点である。分析に利用したオークションデータの落札率は,年々低下する傾向を示しており,セレクション・バイアスの程度も毎期異なっている可能性がある。最尤法を利用してオークション価格および落札確率についてのexponential type II Tobit model を推定すると,逆ミルズ比の条件付き差分は年々上昇している傾向が確認された。このことは,落札率と価格変動の間に一定の相関があることを示している。分析の結果,セレクション・バイアスを考慮しない最小2乗法による価格指数は,対数価格の条件付き期待値の差分を用いて定義した価格指数に比べて4.3%下方にバイアスをもつことが示された。
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Working Paper, School of Economics, University of Toyama.
巻: 351 ページ: -
10.15099/00022276
巻: 357 ページ: -
10.15099/00022318