研究課題/領域番号 |
19K01595
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
蛭川 雅之 龍谷大学, 経済学部, 教授 (10597628)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 接合データの計量経済学 / 2標本回帰推定 / セミパラメトリック推定 / 非対称カーネル関数 / 最近傍法 / 生成された説明変数 / スパースモデリング |
研究実績の概要 |
当該年度に実施した研究内容は次の通りである。 ①最近傍法によらないセミパラメトリック2段階2標本推定量を提案し、その大標本・小標本特性を分析する論文を作成した。特に、非対称ベータ・カーネル関数を使用したノンパラメトリック回帰推定量を代入する2標本推定量の方が、一般に用いられる対称カーネル関数を使用したものに比べて優れた小標本特性を持つことが分かった。本論文は英文査読誌から改訂後再投稿を要請されており、現在改訂作業中である。 ②本研究の成果を理論家と共有するだけでなく、実務家へ浸透させることも重要である。そこで、①に先行して開発した最近傍法を用いた2標本推定量について、経済学者間で最も広く利用されている統計パッケージStataでのコマンド開発を行った。当該コマンドmsregは既に利用可能となっており、また、その解説論文は先頃英文査読誌Stata Journalから刊行された。 ③本研究で取り扱う2標本推定は、主サンプルに存在しない説明変数の代理変数を別のサンプルから生成・代入する手法をとる。この手法は「生成された説明変数(generated regressor)」の特殊ケースと見做すことができる。また、①で開発済みの手法では、パラメータ推定量の収束速度を維持するため、代理変数を生成するのに用いる変数の数を限定している。高次元データから代理変数を生成するには、このような「次元の呪い」の問題を解決する必要がある。これら2点を踏まえ、生成された説明変数とスパースモデリングによる多段階推定を組み合わせた手法の開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績①~③は全て当該年度に実施する予定の課題であったため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、研究実績③に関連し、手始めにスパースモデリングを用いてサンプルセレクションモデルを2段階推定する手法の開発に着手した。既にこの手法は優れた小標本特性を持つことを確認しており、現在推定手法全体の理論的裏付けを加え、成果を論文にまとめている段階である。今後は、この手法を2標本推定にも応用する予定である。 また、研究実績②に関し、ある研究者からmsregの機能に関する問い合わせを受けた。その結果を踏まえ、msregにおける推定可能なモデルの拡張、予測機能の充実等を検討する。 さらに、2標本推定法のさらなる深化の例として、傾向スコア等を用いる「次元の呪い」への対応、無作為抽出によらない標本(例:層別抽出法)へのモデル拡張等も視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、研究発表を予定していた学会が中止もしくはバーチャル開催になり、旅費が発生しなかった。今年度も同様の傾向は続くものと予想されるが、バーチャル学会の参加を増やし、国内外に対し研究成果の発信していく予定である。
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