本年は、2009年度から2018年度までの中小企業庁『中小企業実態基本調査』の個票データを用いて非製造業に属する中小企業の生産活動における技術的非効率性を実証的に分析した。 具体的には、生産要素として正規雇用者、非正規雇用者、資本ストック、原材料を持つ確率的なフロンティア生産関数を計測することによって技術的非効率性尺度を推定して非製造業の各業種に属する個別企業の特徴を明らかにした。推定方法は、技術的な非効率性と企業の異質性を識別できる true random effects modelを採用した。われわれが得た推定結果は以下の通りである。まず、非製造業の全ての業種において生産活動における技術的な非効率性は無視できない大きさであることがわかった。さらにこの技術的な非効率性によって生産性(総要素生産性)が大きく低下していることがわかった。第2に、技術的な非効率性が高い企業の特性を見ると、規模が小さく、非正規雇用者の割合が高く、利益率で測った生産のパフォーマンスが低く、負債比率が高く、低い借入金利に直面していることが明らかとなった。負債比率が高いにもかかわらず、低い借入金利を支払っていることは効率性の低い中小企業(ゾンビー中小企業)が低い借入金利によって延命していることを意味しており、金融機関による追い貸しが実施されていることを示唆している。最後に、不活発な設備投資と高い負債比率が、もっぱら技術的な非効率性を引き起こしていることがわかった。
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