研究実績の概要 |
本研究は医療インフラの整備がどう医療サービス需要や健康状態に影響するかを分析し、より効率的な医療制度改革のための政策的インプリケーションを導くことを目指している。新生児・妊婦死亡率は低所得国においては未だに高く、これを下げるには医療サービス利用を増やすことが重要であるが、途上国における利用率は未だに低い。この理由の一つは医療機関へのアクセスの悪さにあるが、医療インフラの整備がどれほど医療サービス需要を増やすか、健康を改善するかについての詳細な分析は存在しない。本研究では途上国としては稀な長期(約20年)にわたるパネルデータを用いて、医療機関への距離が縮まった地域において医療サービス需要や健康状態が改善したか検証する。 令和5年度は、本研究の要となる2019年度の医療機関リストのうち、GPS情報が欠落している施設のGPSを直接調査するプロジェクトを行った。その結果、過去に閉鎖された施設については収集が難しかったものの、地域の保健省支部の方々のご協力のもと、いくらかのデータを回復することができた。また、元々本研究では、Research on Poverty, Environment, Agricultural Technologies (RePEAT) Survey 2005年及び2012年で収集されていた妊娠情報と同じ情報が、2022年のRePEAT調査でも収集されることを前提として始められたが、予算不足により妊娠のタイミングのみしか収集されなかったので、妊婦検診や分娩サービスの利用頻度にについて、独自の聞き取り調査を行った。 コロナ禍に端を発した一連の作業の遅れや、RePEAT Surveyでの予算不足などによる影響はあるものの、必要なデータはそろったため、これらを合体させれば予定通り分析作業を行うことができる状態になった。現在それに向けたデータクリーニングを進めている。
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