研究実績の概要 |
本研究課題の研究実績として、多数のワーキング・ペーパーを公表したことに加えて、Greaney and Tanaka (JJIE 2021), Ito and Tanaka (JWE 2022), Tanaka (IEEP 2022), Tanaka et al. (AJE 2023) の4つの論文が国際査読誌に掲載された。Greaney and Tanaka (JJIE 2021) と Tanaka (IEEP 2022)においては、労働者の賃金データと事業所・企業の属性データとを接続し、企業の国際化と労働者の賃金との関係を、特に外資系企業の役割に注目しつつ、分析を行っている。Ito and Tanaka (JWE 2022)は、FDIの標準的な企業異質性モデルでは、海外関連会社がすべて所有されている場合を考えるのに対して、部分所有の海外関連会社は数多く存在することに着目し、Helpman et al.(2004)に基づき、様々な所有構造を許容するモデルを構築し、生産性と所有シェア・所有構造の関係について検証可能な仮説を提起した。その実証分析では、生産性の高い企業ほど関連会社の所有比率が高く、生産性の低い企業ほど卸売業者や現地パートナーとのジョイント・ベンチャーを選択する傾向があることを示した。Tanaka et al. (AJE 2023) では、コンジョイント(ビネット)調査実験を採用し、外国企業による買収に対する選好の決定要因を分析した。実験の結果、外国企業の国籍、互恵性、買収される企業の所在地の経済条件が重要な要因であることを示した。また、サブグループ分析によれば、回答者の年齢が高いほど、また女性ほど対内直接投資に否定的であることを明らかにした。
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