研究課題/領域番号 |
19K01617
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
福井 清一 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (90134197)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小口医療保険 / 離散型選択モデル / 社会的選好 |
研究実績の概要 |
2019年度は、カンボジア、シェムリアープ州の農村地域において、すでに貯蓄を基礎とした融資組合が活動を行っている村を対象に、6月に予備調査を行い、その結果を踏まえて9月に本調査を実施した。本調査では、調査地域から無作為に12村を選び、そこから250世帯を標本世帯として抽出した。そして、調査員を雇用して、これらの標本世帯を対象とする家計調査、現行小口医療保険の代替的スキームに対する標本世帯の支払い意思額を推計することを目的とした離散型選択実験、および、標本世帯員のリスク選好(危険回避性向、損失回避性向)、時間選好(現在バイアス)の指標の測定を行った。 以上のような一連のフィールド調査により収集された情報を用い、まず混合ロジットモデルを援用し代替的小口医療保険に対する各被験者の支払い意思額を推計した。次に、代替的保険スキーム実施のための費用を計算し、小口医療保険の普及可能性について検討した。そして、最後に、村落貯蓄組合への参加、リスク選好、時間選好の程度、および、その他の家計特性による、支払い意思額への影響について分析を行い、代替的小口医療保険制度実施への支払い意思額が実施費用を上回ること、村落貯蓄組合への参加と時間選好が支払い意思額に影響することを明らかにした。これらの結果の一部は学術誌に投稿して採掲載された。また、同時に、日本経済学会、日本農業経済学会でも、研究の成果の一部を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度のカンボジアにおける調査研究は、概ね、予定通り実施された。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も、2019年度と同様、標本世帯の家計調査、離散型選択実験による小口保険に対する各被験者の支払い意思額の推計、および、標本世帯員のリスク選好(危険回避性向、損失回避性向)、時間選好の指標の測定を行い、収集したデータを用いて、小口金融が小口保険の購入におよぼす影響を推計する、という調査研究を、バングラデシュで実施する予定である。だだし、バググラデシュにおける小口医療保険の調査は、先方の都合で困難となる可能性があるので、その場合は、ミャンマーにおいて、カンボジアの医療保険の研究と同様の分析手法により、小口金融制度の普及が小口作物保険の普及におよぼす影響について調査研究を行う。作物保険と医療保険は一見して異なる対象のように見えるが、いずれも貧困層向け保険制度であり、小口金融とはトレードオフの関係にある点で本質的には同じ問題が内在しているため、調査地、保険の種類が違っても研究の目的には達成されると考えている。
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