研究課題/領域番号 |
19K01618
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
西川 浩平 関西大学, 経済学部, 准教授 (60463204)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薬価制度 / ジェネリック医薬品 / インセンティブ政策 / 抗精神病薬市場 / 需要関数 |
研究実績の概要 |
本研究はジェネリック医薬品の普及に向けて2016年度に導入された、需要者側・供給者側へのインセンティブ政策に着目し、いずれの政策がジェネリック医薬品普及を牽引したかを定量的に明らかにするものである。
研究の3年目となる本年度は、2015年4月~2018年3月にかけてのレセプトデータより作成した、医薬品×年月×診療所/病院レベルのデータセットを用いて、離散選択モデルに基づくネスト型需要関数を推定した。需要関数のネストはグループ内シェアとサブグループ内シェアより構成され、次に示す医師の処方行動を想定した。まず医師は抗精神病薬の世代(第1世代/第2世代)×先発品/後発品別に作成したグループから1つを選択する。次にグループ内で作成した作用機序別のサブグループより、1つの作用機序を選択し、その作用機序内に含まれる抗精神病薬を患者に提供する。
需要関数の推定結果より、抗精神病薬市場において、医師の処方は薬価に対して弾力的であることが明らかとなった。この結果は、2016年度に導入されたジェネリック医薬品上市時の薬価を引き下げる需要者側へのインセンティブ政策は、ジェネリック医薬品の普及に寄与することを示唆する。さらに2016年度の診療報酬改定で導入された供給者側へのインセンティブについても、ジェネリック医薬品の普及に寄与することを示す結果が得られた。またシミュレーションを実行する際に重要な役割を果たす、グループ内シェア、サブグループ内シェアについては、0.6~0.9程度と理論と整合する係数が得られた。この結果は、抗精神病薬市場で特定のジェネリック医薬品の価格が変化した場合、同じ世代かつ作用機序のジェネリック医薬品への切り替えが進むことを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
所属の変更に伴い、厚生労働省より借り受けている匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報の利用場所を変更した。この利用場所の変更には、厚生労働省から許諾を得る必要があるため、申請書類を再提出し、再審査が行われた。これら手続きは4~7月にかけて行われ、この間分析に必要なデータを利用することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
需要関数の推定結果に基づくシミュレーションに依拠することで、(1)需要者側へのインセンティブが導入されなかった仮想現実における市場構造・薬剤費、(2)供給者側へのインセンティブが導入されなかった仮想現実における市場構造・薬剤費を明らかにし、2016年4月に導入された需要者側、供給者側へのインセンティブのいずれが、ジェネリック医薬品の普及に大きく寄与したかを明らかにする。シミュレーションによる評価を踏まえた最終的な分析結果を論文として取りまとめ、学術誌に投稿する予定である。 これと並行して国内外の研究会や学会での意見交換の結果を適宜反映させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析に用いるデータセットを使用できない期間があったことで、分析結果を論文にまとめることができず、学会報告、英文校閲などへの予算を使用できなった。分析結果を早急に論文にまとめ、この差額分を学会報告、英文校閲への予算として、次年度使用する予定である。
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